最高のディナーショー……ブレックファストかブランチかランチかもしれない
「うまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまいうまい!」
ムシャムシャモグモグゴクゴク咀嚼音がする。
大量の飲み物と料理が瞬く間に消えていく。
だが、その様は暴飲暴食とは程遠い。
鯨飲馬食の反対語とでも言うべき食べ方で、口一杯に詰め込んで頬張ることはなく、食べ終えた皿に食べ残しは一切無く、皿の外に食べこぼしも無い、食器の使い方も教科書に載せて差し支えないレベルで、咀嚼が不十分なまま嚥下する不健康な食べ方は決してしない。
その物々しい背景さえ無視すれば貴人の豪奢な饗宴にさえ映る。
物々しい背景さえ無視すれば……だ。
「その食事風景だけ見れば見苦しく無いと評してあげても……………いえ、アナタ、この状況下で何をしていますの?」
自称美の天才は百人力の天才鉄人に護衛されながら目の前の独り饗宴を見て困惑と白い目の混じった視線を向けていた。
そう、今ラボの人間はラボから追い出され、自称美の天才に操られた百人力の天才鉄人達に囲まれて人質の様になっていた。
そんな中で、宴を開いている。武器に囲まれている中で避難する時に持ってきていた自動調理魔道具を稼働させ、山の様な料理を作りつつそれ以上の速度で消費していた。
「モグモグモグモグモグモグモグモグ………ゴクリッ、コクコクコクコク……ふぅ、取り敢えず小腹が満ちた。」
魔道具を停止させ、お腹をさすってこちらを見る目には恐怖や焦燥が全く無かった。どころか恍惚とした表情をしていた。
十人分を一人で食べた後である。
「……アナタ、自分の立場が解っているんですの?」
「捕虜にはしっかり食事を与えなければならないというルールがこの国には有るはずだが?」
「アナタが自分で食事を作って食べていることに対する回答にはなっていませんの。」
「あー、折角だから空腹で迎えるのは勿体無いだろうなと思って最低限つまんでおいた。」
「『勿体無いだろうな』?それは一体、どういうことですの?」
疑問符に対する答えは、心地好さげに伸びをして、欠伸をしただけだった。
「……何を考えていますの?」
重ねた疑問符に対する答えは、余裕の笑みだった。
「このラボに認められてるんだ。そこまで間抜けな奴じゃないだろう?
アンタも、気付いてるんだろう?」
笑う。しかしそれは『嗤う』に近いものだった。
「さぁ、旨い物を作るのと味わうの以外は退屈しかないこの場所で折角の娯楽が久々に生まれたんだ。
しかもそれはとっておきときている。なら、旨いものを喰いながら楽しいものを見るのが礼儀というものだ。」
その笑いに対する自称美の天才は最高峰の笑みだった。
「なら、私の美しき物語を、指を咥えて見ておくと良いですわ。」
「そうさな。美しき物語を見せて貰おう。」
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