美と蝶と鉄くずの案山子
物事はそう上手くいかない。
「させるカ」
端子が装置に接続する寸前にそんな言葉をマイクが拾った。
蝶を躊躇い無く叩き潰す鉄鋼の手が一つ。
「緊急時にハ、我々の内の最低でも3機がコこに向かい、不測の事態に備えるようニしていル。
お前ガ天才であると同時ニ、我々も天才であル。自分だけガ優れていると思いあがるナ。」
蝶の羽がもがれ、カメラの映像も途切れ途切れになっていきましたの。
そして同時に、近くにいた人形が私の肩を掴んできましたの。
「残念だガ、お前の好きになるほド甘くはなイ………ム?」
同期しているお陰でどれもこれもが同じ様に振る舞う……気味が悪いですの。
そして、掴んできたその手がカタカタと震えているのが伝わってきましたの。
それが、設定された信号ではないことを、私は知っていますの。
「どうかしましたの?そんな風に震えて。
流石の鉄屑風情でも、私という最高の美に気安く触れることが罪深い事だと理解したんですの?」
「何を、しタ?」
カメラのオートフォーカスが合わなくなっているのがここからでも見えますの。
あれだけ向こう側の機体は『思い上がるな』なんてふざけた台詞を私に吐いてこの醜態。それはとても滑稽?いいえ、私は、醜態を、嫌悪いたしますの。
『お前ガ天才であると同時ニ、我々も天才であル』?『自分だけガ優れていると思いあがるナ』?『お前の好きになるほド甘くはなイ』
侮りも甚だしいですの。
「跪きなさい、愚図の鉄屑。」
私の命令を聞いて目の前で崩れ落ちる。
「ナん、で……」
「接続させなければ大丈夫なんて考え方、今は一体何時の時代ですの?
それとも……単に貴方達の頭が屑鉄でなく藁か何かで出来ていますの?」
あの蝶型端末は有線接続だけでなく無線接続にも対応していますの。
当然、有線の方が通信速度は速いですが、軽く潜入させるくらいなら無線でも事足りますの。
「そんな矮小な端末デ中枢に干渉することナど不可能だ。
物理的な干渉にハ弱イが、情報戦にオいては強力無比。
そう簡単に中枢に忍び込むなド………いや、コレは……」
「鉄屑風情が、やっと気付きましたのね。」
そう、私が持っている通信機器は2つ。
1つは今潰された蝶型端末。あれは無線通信で中枢に潜り込む為の手引きをさせましたの。
そして、もう1つこの私の体内に仕込んである端末。蝶型端末より強力ではありますが、当然ここから地下の中枢まで届けることは出来ませんの。
ただ、私の目の前で突っ立っている鉄屑に糸をつけて操り人形にするくらいなら容易ですの。
本来、この連中は中枢端末を使って動いているせいでそのまま干渉することは困難でしたが、蝶型端末で手引きしたお陰で、鉄屑1機なら容易く、そして、この鉄屑を使って更に中枢へと忍び込むことが出来ましたの。
「さぁ、私のために動くがいいですの。」
やっとなろうラジオ大賞に2作品投稿完了いたしました。ネタは未だある。締切迫る。年末年始の本作……文字通り手数と頭数が足りない!




