自分も美の糧にするということ。何故なら美は自分だから。
美は私のためにありますの。
私は美のためにありますの。
私は美を求めていて、美は私を求めている。我々は一つであるべきものですの。
研究者の私がそんなことを言うのは滑稽極まりないですけれど、『相思相愛』というやつですの。
けれど今の今まで私達が完全に共に在ったことはありませんでしたの。
私と美の間にはどうしようもない障害があって、いつも私達を阻んでいましたの。
どうすれば良いんですの?どうすれば私は美と一つに戻れますの?
私の時間は全て美のために注ぎ込みましたの。それでも美と私の隔たりが無くなることはありませんでしたの。どころか、注ぎ込めば注ぎ込むほどに隔たりが大きくなっている気がしましたの。
支払える物を全て美に注ぎ込みましたの。家族とその財産を、立場とその立場を使って得られたものを。
そして私が注ぎ込める全てを。
警報音が鳴り響く。
『緊急事態 緊急事態 緊急事態 研究申請及び該当データの無い生物がエリア5に侵入シました。
警戒レベル2 ラボ隔壁による遮断を試みマす。 該当エリア内にいる者は速やかに安全の確保ヲ。』
「どういうこトだ?何があッた?」
困惑する鉄人。
「やられた!」
鋼線で簀巻きにされた自称美の天才を見る。
こちらに仕掛ける可能性は考えていたが、ここまで追い詰められることを予期していないはずの相手が大きな仕掛けをラボにするとは考えられなかった。そんなことをすればただじゃ済まないのだから。
「くく、けけ、ケケケケホ、ホホホ……ケッケッケッケッケ!」
目をギョロギョロと動かしてよだれを垂らしながら虚ろに笑う。
「一体何を放ったんだ⁉種類は?数は?生態は⁉何を考えている!」
鋼線に巻かれた自称美の天才に掴みかかる。
自称美の天才は、狂人は笑っていた。
「くく、美は私。私は美。
ケケケケケケ…………美を否定する者は、美によって否定されますの。
私に歯向かうものは、研究の材料になる以外の用途は、ありませんの。
さあ、ここまで美の邪魔をしたのなら、私に、償いなさい。贖い、なさい。謹んで美の美の糧になりなさい。誇りなさい!ケッケッケッケッケケホホホホホホ!」
顔色がみるみる蒼くなっていく。そして、声が枯れて見る見る内に肌が枯れ木のように枯れていった。
「おい、おいおいおいおいおいおいおい何をやってるんだお前!」
笑いながら美からどんどん離れている。そして、口から泡を吹いて…………
「ケ、け、ケケホッ、ゲホッゴボゴボガホッゴボゴボボゴボボボボ」
吹いた泡が徐々に大きくなって流れ落ちて、転がっていく。
それは卵だった。いくつもいくつも、流れ転がり落ちていく。
「全ては私に成る」
うわ言の様なその言葉に答えるように卵が割れた。
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そして、12/16はアニメモリアーティーで淑女を演じて下さった森谷彩子氏のお誕生日です。
おめでとうございます。




