驚異的な力に救われた。
子ども達は遊び疲れて眠っている。彼女も眠りに落ちた。
この半年で6人暮らしになって手狭になった。男1に女5。
着替えの必要もあるので流石に部屋は区切ってある。
完全防音で見えないようにしてある。
「さて、やるか。」
防音である程度音を立てても問題ない。
彼女らの治療はほとんど終わって、治療用魔道具の使い方はもう教えてあるから時間の問題で、あとは自分らで勝手にやってくれる。
ここまでくれば俺がすることはない。あとは俺のやることをやるだけだ……。
今まで得た知識と経験を総動員して組み上げる。
今までの全てを積み上げて、今までに無かった画期的なものをここに引っ張り出す。
指先をより速く動かす。1/10では足りない。1/100でも大雑把過ぎる。1/10000?もう1㎜に詰め込める限り詰め込むなら単位は何でも良い。技術的な無理があるなら理を作って有理にしてしまえば良い。
作っているのは必要なもの。
これを作れなければ困るもの。
これはとても、とても大事なものだ。
なのに心が躍る。だから躍っている。
今までの限界を超えた、今までに無かったものを作り出す。
心躍る。自分が想像したものをイメージ通りに組み上げる。
作っている最中に、作っているからこそ生まれた最初のイメージ以上のものが組み上げられることもある。
逆に、作っている過程でイメージ通りにならず上手くいかなくて苦悩することもある。
だから楽しい。思い通りにいかないからこそ、それを思い通りにするために工夫することが楽しい。
予想以上や以下が出て来るこの楽しさ。笑いが止まらない。
真剣だから、極限状況だから、だからこそ楽しいが止まらない。
頭がこれ以上の楽しいを想像するために、手足がこれ以上の楽しいを創造するために深く、深く、音も光も痛みも無い世界へと沈んでいく。
「〇〇〇〇〇〇〇〇?」
肩を強く掴まれてハッとした。
久々に音と光を感じた気がした。それは新鮮で刺激的過ぎて、目と耳から入ってくる情報が脳を突き刺していく。
何か、音と光があるのは解かったが、それが何なのか解らない。
腕が凄まじく痛い。頭が割れそうに痛い。鼓膜が揺れて、動く光が鼓膜を突き刺す。
「どうしたんですか?」
やっと音の正体が声だと気付き、動く光の正体が人のシルエットで、腕の痛みの正体が自分の肩を揺らす少女の手によるものだと気付いた。
そして、頭の痛みは完全にリミッターが外れて酷使されていた頭の危険信号だとやっと理解した。よく見れば、腕の痛みは少女が原因だが、手首から先は完全に使い過ぎで筋肉痛になっているだけだった。
肩の痛みに救われたな。




