その足は文字通り日進月歩で
あの鉄球の内部に満たされた翡翠色の水は薬液であり、血液であり、血管だ。
鉄球に入った対象者を血液と同じ働きも果たせる溶液で包み、体内に行き渡らせることで本来の体内と体外の境界を曖昧にして、鉄球までが肉体だと誤認させて生命を維持する血液を一時的で限定的でかつ実質的ではあるものの拡張させている。
あの鉄球は今、彼女らの体の一部に、延長となっている。
先ず、あんな消耗した状態ではまともな治療は出来ないと考えた。
体内体外隈なく漏れなく健康の文字が入る余地無くボロボロになっている状況では治療のしようがない。体力が足りない栄養が足りない血が足りない。治療を終える前に死ぬ。
かといって食事を摂らせようにもあれでは栄養を吸収する体力さえ無い。というより明らかに飢餓状態で下手に栄養を与えてしまうとリフィーディング症候群で死ぬ。
かといって栄養の足りない体力の無い状況で外科的な手段を取ればそれは治療医療ではなく単なる刃物を用いた刺殺斬殺になる。
だから、足りないものを外部装置で補うことにした。
鉄球を肉体の一部として誤認させ、その肉体の一部である鉄球に外部から干渉する。
鉄球に対する干渉は間接的に中の治療者の肉体への干渉に変わっていく。
その途中である程度肉体が損傷を受けても、栄養が足りなくなっても、鉄球内部の環境がそれを補う。
緩やかに治療をしながら治療によるデメリットを引き受ける。魔道具を肉体の一部として治療による負担を引き受けながら安全に確実に治療をする。
魔法工学における、そして魔法医療における一つの完成形。
それがこの医療用魔道具、『メディスフィア』だ。
元々は死にかけの人間を辛うじて生かす為に使われていたが、な。
「さて、こちらも始めよう。」
ハッキリ言って、研究と開発、技術力向上の結果、今やメディスフィアは二世代前の魔道具となっている。
型落ちだ。
それ故にああやってある程度数を用意することが出来ている
薬液のコストがネックになっているが、それをクリアすればこの装置から欠点という欠点はなくなるところまで来た。
そして、今の世代。今俺が開発している、開発したものはその先を行った。
『メディスフィア』はその性質上間接的な治療になるため、治療速度はどうしても遅くなる。そして効率が悪くなる。
確実に安定した治療を施せるという点においては確実だが、それは意識さえ無い、自発呼吸も危うい人間に対応する時には足りなくなる。
目の前の少女の腕や足にそれを取り付ける。
一見すると少女の自由を奪う枷の様にも見えるが、その枷は大きな制御用装置に繋がっている。
「気に入らない。否定してやる。」
今にも消え入りそうな命を前に、当時の私はそう口にしていた。
ブックマークと逆お気に入りユーザさんが増えていました。ありがとうございます。
つまりこのメディスフィア、ドラゴ〇ボールに出てきたアレと同じです。
参考サイト:https://yokohama.jcho.go.jp/wp-content/uploads/2022/09/20231212_no43_refeeding.pdf




