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一歩近付き、一歩の間に攻め、一歩も動けない

 好奇心は猫を殺す。人だって殺す。

 爆音が鳴り響く場所を人が怖がるのはそこに爆発が、危険があるから。

 爆音が鳴り響く場所に惹かれ行くのはそこに未知が、魅力があるから。

 爆音と危険を繋げて考えられるなら、爆音に近付き痛い目を見た経験を数多持っているなら、そこには近付かない。

 経験が無くとも爆音に繋がる経験を知識として持っていてもそこには近付かない。


 だから、未知に惹かれて、手を惹かれて、爆音と危険が繋がらないという保証があれば、振り払うという考えが無ければ、近付いてしまう。

 たとえそこが死地であったとしても、好奇心が人を殺す。好奇心で人を殺しに行く。

 好奇心を掻き立てる悪意。だが、それに惹かれる者達は気が付かない。

 好奇心は人一倍有る。けれど猜疑心は人一倍無い無いから。

 悪意というものを知らないから。

 けれどそんなことはお構いなし。悪意を知らないからこそ好機と悪意はそこに付け込み、忍び寄り、使い潰す。

 悪意は忍び寄る。近付いて行く。着実に、小さな一歩一歩一歩………




 一歩一歩一歩……

 攻撃攻撃攻撃……

 絶え間を許さない。考える隙を与えない。着実に削っているように見せる。

 徐々に徐々に家のあちこちが砕け散っているように見える。

 装甲があちこち剥がれ、脚は一本が動かなくなり、二分前と比べて機動力は72%にまで落ち込んでいる。

 勿論、あの『家』がこの程度でここまで砕ける事はない。

 最初に相対した時、W.W.W.無しだったとはいえ、透明化と高機動に翻弄されて装甲一枚剥がすのに一苦労だったのだ。こうもポンポン壊れるほど欠陥建築ではない。

 それを知らないから容易に砕ける様を見ても違和感を覚えない。

 威力重視ではなく音と衝撃重視の攻撃に怯み、押されている。

 爆発、電撃、砂嵐、豪炎そして……

 「精密なものほど小さなことで崩壊するとのことですが、果たしてこれはどうでしょうかね?」

 再度砂嵐を展開。だが、今度は先程と違い燃えはしない。

 ゆっくりと、嵐と表現するよりも砂埃を帯びた風に近い。

 相手が警戒しているのが見て取れる。だが、あの巨体ではこれを完全に避ける事は出来ない。

 「あの自称そこそこ天才ならこれに対してある程度の対応は出来た。

 だが、そこまで乗っ取って改悪してしまえば、そうもいかない。」

 砂埃が魔改造家に覆い被さっていく。

 乾いた音とともにそれの殆どが重力に従い落ちていく……とはならなかった。

 『気流操作』

 循環する風で砂埃は舞い上がり続ける。

 それは嵐ほどの強さは無く、たとえ嵐であったとて、あの堅牢な装甲に傷を付けることは出来ない。

 装甲に干渉は出来ない。だが装甲の隙間に忍び込む事なら出来る。

 あれがあの家を乗っ取った具体的な方法は一見して解らなかったが、家の末端、脚部の端にまで蔓が伸びていた。

 あれは中枢に撃ち込んだ種子が末端にまで広がったというより、末端から中枢に伸ばした。つまりそこに少なからず隙が有るわけだ。蔓を侵入させる隙が。

 その隙に砂埃をねじ込むくらい訳もない。


 精密な機械。だからこそ、その隙間に砂埃がみっしりと入り込み、動きが止まる。

 家が止まった。



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