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謙虚な在り方

 本当に、とても謙虚な人間だと思う。

 最低限の着るものを欲して、最低限の食べるものを欲して、最低限の家を欲して、慎ましやかな家庭を築いて幸せに生きていたいという願い。

 うん、とても謙虚で慎ましやかな願いだ。


 炎と芥の嵐から逃れようと暴れる。


 だから、あんなボロい布切れを被って、あんな代わり映えと味気の無いものを食べて、あんな廃屋もどきに自分がいるのはおかしい。


 嵐を生み出した原因を叩き潰しにかかる。


 謙虚な自分の最低限の願いは叶えられるべきだ。

 だから最低限の着るものを手に入れる。

 最低限腹を満たす食べ物を手に入れる。

 最低限雨と風を凌げる家を手に入れる。


 地面を脚で踏み付け猪口才に動く虫を踏みつぶそうとする。

 枯れ木を乱暴に引き抜いて投げつける。

 考え無しに走る。


 外からの絶え間無い波状攻撃。

 それに対抗する自分の反撃。

 それらが合わさり、触覚も聴覚も視覚も嗅覚も塗り潰される。

 だから気付く事が出来なかった。

 本来なら少々暴れた程度で、壊そうとした程度で剥がれるどころか傷付く事さえない『家』の装甲が何枚も剥がれていることに。

 長年の使用か周辺一帯を更地にするような爆発でも起きない限り摩耗しない家の駆動系や関節部分の動きが徐々に(にぶ)(のろ)くなっていることに。

 浸食した家の内から徐々に手を伸ばす自称そこそこ天才の牙が確実に自分に迫っていることに。


 「あまり得意では無いのですが………」

 そう言いながらH.P.を棒状に引き伸ばす。

 H.P.から閃く光と弾ける音が響き渡る。

 それは天災の存在の証左。それにとって人間も怪物も関係無い。法則に基づき標的として貫き通り抜け焦がすだけ。

 『雷刀』

 W.W.W.による動作補助と出力補助。それによって少女の手の中の雷霆が怪物を焼き切った。

 爆音と閃光、そして衝撃を引き連れて。




 《スバテラ村にて》

 「ほらほら、やっぱり突然発生した雷雨だよ。聞いたでしょ?ほら、建物に入った入った。へそ取られるよ。雨降ってくるよ。雷落ちたら危ないから、扉閉めてカーテン閉めておとなしくしてよう。大丈夫、この辺の家は頑丈だから雷くらいへっちゃらだから。」

 孫娘は何食わぬ顔で来客や村人を家の中に押し込んでいた。

 どこからか聞こえる破裂音と地響き、それが人々の不安を掻き立てているのを見た。

 そして、それが一体何なのか、まったく分からない訳では、そこまで察しが悪い訳ではなかった。

 『自分は置いていかれた』とは思わない……なんて思えない。

 けれど自分が行ったところでどうにもならない。足手まといの邪魔になる。

 だからといって何もしないのは違う。それなら、ここに居る私だから出来ることを。



 この謙虚、最近既視感があるな、と思いました。

 思い出しました。どこぞの強欲担当さんでした。

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