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風は吹く

 燃える嵐が家を焼かんと襲い掛かる。シェリー君はW.W.W.で熱と破片を防いでいるが、それがなければ焼け死ぬ程の高温。果たして相手の反応はといえば……動きが、変わった。

 先程まで前進と襲撃しかしてこなかった魔改造家が後退を選んだのだ。

 嵐に触れた表面は焼かれ、同時に削られていた。

 風の中の石片は高温でも燃えず、今も炎の中で渦巻く刃を産み出している。

 燃やし、脆い消し炭に変え、同時にそれを削り取り、その下にある瑞々しい異形の身の内に焼け石を突き刺して焼いていく。

 見た目異常に深刻な破壊をもたらす。

 痛みが有ろうが無かろうが、考える事が出来ればこれに対して突っ込む事はない。

 「まだまだです!」

 『地形操作』

 更に脚部に滑り込み、火に焼かれていない反対側の足元の地面に触れて崩す。

 崩すと言っても脚が引っかかる程度の穴が出来る程度。生き埋めどころか足止めにもならない。

 だが、バランスは崩れる。本来後退するために加えた力を転倒する力へと変える。

 芥と焔に追い詰められてもがく。

 苛烈と言っても過言ではない攻勢。攻める余地なんて与えない。考える隙に殺してやるという殺意が相手の思考に刺さる。

 だが本人は至って冷静で平然と、そして穏やかな心を維持していた。

 風は怪物へと吹いている。




 大したものだ。

 孤立無援の絶望的な状況で怪物相手に右を左に上を下にの大混乱を起こしている。

 拍手喝采を贈りたいが、そんな暇があればこの両手を動かせ。

 そもそも拍手喝采をしても賛辞を伝えたい相手には伝わらず、伝えたくない相手に居場所が伝わって惨事になる。

 怪物の本体、違うな、怪物が生えている人間の場所は何処だ?

 自分で作った傑作に自分が不正に入り込むという馬鹿な真似をしている。しかもロクな装備も設備も無い状態で、だ。

 構造は知っているし、どういう特性を持っているかも知っている。誰よりよく存じ上げているが、だからこそタチが悪い。始末に負えない。

 魔法に対する干渉は真っ先に考えた。だから魔法に対抗する術式は組み込んである。

 その術式は自分で自分を変貌させて毎回毎回違った性質で、違った特性と武器を持ち、違った対策を要求する。

 相手にとって厄介な性質を作り上げ、招かれざる客が土足で上がり込んで奪われない様にとしてあった。

 「自分の家を好きにするために招かれざる客になって土足で踏み荒らさないと行けなくなる事を考えていなかったのは全くああ落ち度だ。」

 だが、先程よりより大胆により緻密により的確な動きが出来ている。

 外で暴れてくれているお陰でこちらに割くリソースが明らかに減って動きやすくなっていた。

 追い風が吹いている。







 そして……

 「3人とも、ちょっと良いかな?」

 不穏な風が吹いた。



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