チェスではなく将棋の戦い
脅威度の更新をしよう。
最初、脅威度は低いと評価していた。
あの若者がいくら植物で体を覆い他の真似事をしていようとタカが知れていた。贋作を重ねれば真作に勝る事が無いとは言わないが、薄っぺらな劣化コピーを数枚重ねた程度で鋼鉄の盾に張り合う事は出来ない。
話にならない。脅威度はスバテラ町に居た巨大怪植物と比べるべくもない。
強いて厄介な点を挙げるなら、シェリー君が『怪物相手』ではなく『人間相手』でものを考えるから致命傷を避ける傾向にあったというところだ。
この場で慈悲を見せても後々『殺処分』になる可能性があるというのに……まったく、美点だが、頂けない。
話を戻そう。今の脅威度は劣化粗悪品の塊から跳ね上がって別物になった。
この場でシェリー君に立ちはだかる2人……もう『人』と言って良いか解らないが、其の内、こそこそと背中から狙っていたトーレーという輩が積極的でなかった段階でその可能性はあった。
目の前に居る異形。
自分の望みで肌の質感から手足の数や形状から何から人のそれから外れていった結果、なれのはて。
人から外れている。だからシェリー君は気付けなかった。正確に言えば気付けていたが気に留めなかった。
体の動きがぎこちなかったこと、目が虚ろで不自然な動きをしていたこと、反撃された時の反射が無かったこと、それらの点からこの場に居る2人は1人2役と考えるべきだった。
ここでそんな風に君を欺くとしたら、相手の企みは町や村の襲撃か自称そこそこ天才への戦力集中と接収目的と勘繰るべきだった。
それを怠った結果がこれだった。
自称そこそこ天才の『家』が襲われ、機構の鳥の制御が奪われている。
あの自称そこそこ天才が簡単に死ぬ人材ではないという実績はあるが、それでも制圧されて主導権は奪われているという事実がある。
最悪の場合は盾にされる、死体を見る、そしてあの頭脳が敵方に落ちて使われる事を覚悟する必要がある。
もしあの自称でそこそこ天才を名乗っている男が敵になったらそれこそ今のシェリー君に勝ち目は万に一つも無い。
「油断したね。一気に形勢が逆転した。」
W.W.W.の展開が間に合ったお陰で鳥葬は延期になっているが絶え間ない鳥の襲撃の圧力で動けずに居る。啄む音が音が響く。
「申し訳ありません……」
意気消沈。蒼い顔をしている……止む無しだ。
「自称そこそこ天才の方が落ちた。孤立無援。このままこの場に立ち止っていれば向こうの戦力が合流して君はリンチだ。」
「はい。」
「このまま居れば、もし自称そこそこ天才が万一無事だったとしても、それに気付いて助けられる者は居なくなる。
町と村に居る人間はおやつにされる。時間の問題だ。
モラン商会の連中も死ぬな。特にあの3人は真っ先に死ぬ。死んでいる君を助けようと無駄な努力をして無駄死にする。」
顔面は蒼白。しかし、その手に力が入っているのが見て取れる。
「待つかね?それとも……足掻くか?」
豪雨のような音が響く中、シェリー君は私を見て首を横に振った。
『足掻きます!』
そう受け取った。
ブックマークありがとうございます。
昨夜物凄いPVが爆増していたのですが、何事が起きたのです?




