千日手か、それとも大逆転か
こんな茶番を懐に隠していたとは驚きだ。
真似真似真似。やることなすこと出来損ないの真似ばかり。
誤解を招く様な言い方をしたが、別に真似自体が悪いとは言わない。
人類は真似をし続けてきた。原始時代からずっと、真似をして、それを更により良いものにして、次代にそれが真似されて、更にそれをより良いものにして……その結果が今だ。
だが、今のこれらは単なる先人の猿真似。劣化品のそれを我が物顔で、オリジナルよりもずっと良いと胸を張る。
だが、オリジナルの方がずっと良かった。
経験を継ぎ接ぎした歪な形をしていたが、周辺一帯丸ごと更地にする必要があった。
人を畑にして食い潰そうという飢餓は単純明快に脅威だった。
研鑽を積み重ねた暴力で殴り倒す力強さがあった。
考えなしに躊躇い無く暴れる迷いの無さが、自分が人を使うのだという狡猾さがあった。
あれは人の形をしていない上に人外の強さが無い。かと言って人の強さも無い。
人ならば驚きと対応力がある自称そこそこ天才の方が圧倒的に巧く上手く強い。怪物よりも強い。
『戦闘力』ではなく『対応力或いは適応力』だ。
燃え滓が目の前に残る。それは灰になって風に吹かれて炎と共に散っていく。
表情は浮かない。そして、目は次を見ていた。
地面が割れてそこから出てきたのは灰になって散ったばかりのそれ。
「また劣化コピーか……飽きたな。」
「その言い方には異議を唱えますが、あまり良い事態とは言えませんね。
このまま千日手をされると、困ります。」
現在、シェリー君は魔法をW.W.W.の補助を用いて使用している。
蒸熱滴爆発はコストパフォーマンス的な観点からして優秀だが、使用回数が無限というわけではない。
だが、あの手の自己顕示欲が樹皮をまとっているような輩が黒幕として遠隔地に潜伏してこちらの消耗を待てるか?否、それはない。
潜伏している。しかも自分が直接見える場所で、そして最後には自分が手を下すためにわざわざリスクを冒して出てくる。
だが、そこまでもう待てない。先程までのお遊びで出て来なかった。これ以上は目撃者のリスクを考えて引き摺り出す。
そういうわけでシェリー君が攪乱と妨害を担い、自称そこそこ天才が高出力で引っ張り出す構図が最適なのだが、先程から自称そこそこ天才側に動きが無い。
機構の鳥は空で編隊飛行中。シェリー君を庇ったものは動きが無い。
「ジーニアス様、聞こえていますか?」
動きがあまりに無いシェリー君が声に出す。腕を巨大化させた二体目を爆発しながら後ろで吹っ飛んで死んだふりをしていたトーレーという若者の強襲を躱して纏めて爆発する。
そうして、事態が動いた。
機構の鳥達がまた鳥葬を始めた。
シェリー君に対して。
「え?」
「やられたな。」
数の暴力が襲来した。
昨日は投稿ギリギリになって申し訳ありませんでした。何故か『E』キーが無反応になり、かと思えば二連続でタイプされるという事態になっててんやわんやでギリギリ投稿となってしまいました。
それとは別に、誤字脱字報告して下さった方、ありがとうございます。60話くらい前のことなので、これを見る頃には少し前のことになっているやもしれませんが、非常に助かります。




