力の使い方を見せつけられる
『赫火豪砲』
泥水に塗れ、水浸しにされ、虚飾のプライドを甚く傷つけられてご立腹のご様子。
明らかにここから何かを射出しますとばかりに腕を筒状にしてこちらに向ける。
筒の中で煌々と赤色が輝く。
学習を、努力をあまりにも怠っている。
自分がこれから何をやるか?それを相手に悟らせてしまえば、先攻される、先手を打たれて、潜入される。
「銃や砲に仕掛けをしておくと腹を抱えるほど面白いものが見られる。
列車内で機関銃を乱射しようとしている連中の用意した弾の中に面白い細工の薬莢に良く似た口紅を紛れ込ませてみるといい、面白い事が起きる。」
筒から高熱が噴き出す筈だったそれは、筒の奥底の赤色が点滅し、それを合図に筒自体が白煙と共に爆発四散することで終わった。
蒸熱滴爆発は文字通り加熱をトリガーにして水滴を吹き飛ばしている。
それは別にこちらの熱でなくとも良い。相手の熱だろうとそれは単なるエネルギー。幾らでも利用出来る。
「さぁさぁ、次はどんな芸を見せてくれるのかね?
この程度ではコイン一枚くれてやれんぞ。」
力がある。だがその力を持て余している。使い方が解らないから大きな力をそのままぶつけようとしているだけ。振り回しているだけ。これでは使われているだけだ。
「火とはこう使うものだ、間抜けめ。」
気流操作で空気中のとある物質を弄り、奴の周辺にだけ充満させる。
「Aaaaaaaaa!」
本来ならここで死ぬのだが、矢張りあれはそういう枠組みではないということだ。
激高して、こちらに向かって来ようとしているが、もう遅い。
「着火」
それは小さな火種。だが、条件を揃えた場所で小さな火種は全てを燃やす焔炎と化す。
「これが火の使い方だ。覚えておくといい。もっとも、使いこなせるかは別問題だがね。」
空気中の二酸化炭素を一酸化炭素と酸素に変え、それに着火しつつ周辺の気流を操作して爆発を散らせずに荒れ狂う嵐に変える。
「AaaaaaaaAaaaaAaaAaaAAAAA!」
燃え尽きようとしながらこちらに必死に突っ込んで来る。
最後の足掻き。これが常なら死なば諸共燃やそうという執念と表現出来る。
だから一歩、執念に慄いた様に斜め後ろに下がった。
『H.P.』
小さな、手のひらの大きさに筒状に折り畳まれたH.P.を枯れ木に付ける。
筒の一端は枯れ木に、そしてもう一端の先には焚火。
「こういう使い方も出来る。」
強度強化で硬質化した布の棒。その中、折り畳まれて発条になっていた部分が抑え込んでいたエネルギーを開放する。
枯れ木に付けられた一端は伸びず、もう一端が矢の様に飛ぶ。
燃え尽きる寸前の焚火程度、どうということはなかった。




