鉄翼と巨腕の競争曲
引き剥がす動きをしていた。
翻弄してこちらをチクチクと斬り付ける時、何時だって切り返す動きは……こちらが好機だと思うような動きをする時には必ずこの体がもう一人の相手に背を向けていた。
そして、好機だと思って攻撃をするには一歩相手側に、つまりもう一人から一歩離れる形で踏み込む必要が絶対にあった。
けれど、それが解ってしまえば、こうして自分を堅く包んで転がれば、そんなことは無視出来る。
2VS2を相手が避けている事は予測していたが案の定だった。
攻撃が苛烈に、精緻さを欠き始めた。
とは言ってもこちらには大して効果は無い。転がり続け、目に見えはしないが爆発音のする方へと確実に着実に近付いている。
それに比例して衝突する数が増え、雑に強くなっていく。
こちらの相手が落ちるのは時間の問題。あとはもう一人を2VS1に持ち込んで殺せばそれでおわり
バキ
光が眼球を突き刺した。
なんだ?何が起きた?
それが来た方へ、その先には暗闇の中、小さな、しかし外と内を繋げる亀裂があった。
解った。斬られた。何故?どうやって?
何が起きている?
損傷率73% 左翼の著しい破損 右翼の著しい破損 飛行が困難です。
解っている。けれど困難なだけでまだ飛べる事も知っている。
先刻2回のアタックで解ったことがある。
最初の1回目で衝突した時に響いたあの音、塊の内側には空洞がある。腕を巨大化させて本体を覆っているだけで内側まで木という訳ではない。内側をある程度空洞にしないと動けない、という事だろう。
そしてもう1つ。あの塊の表面は一定の強度ではない。
2回目の鋼鉄鳥弾の飛行記録を見たとき、ある程度安定した動きで操作していたにも関わらず、速度や翼への負担の数値が一定ではなかった。
堅い部分と脆い部分がある。
転がっているから自信は無いが、継ぎ目の様なものが時折見える。
あれ、もしかして腕を組んでいるだけで継ぎ目があるんじゃないか?
隙間を狙ってしまえば、中に届くんじゃないか?
「大当たりだ!」
冷静な指の運び。だがその言葉には熱が詰まっていた。
「マーキング 破損個所 さて、どんどん行くぞ。」
指先が動く。
光が徐々に大きくなっている。
何度も何度も、転がっているにもかかわらず、同じ場所を的確に狙って当ててきている。
当然それを放置しておくほど間抜けじゃない。穴を塞ごうとこちらが動くと、別の場所に穴が開き、それを塞ごうとすると最初に開けられた穴の周辺に穴が開き、転がった時の衝撃でそれが広がった。
爆発音は近付いている。相手もボロボロに壊れそう。けれどこちらも、危うい。
だから、意を決した。
損傷率83% 左翼の著しい破損 右翼の著しい破損 飛行が困難です 飛行が困難です
大丈夫、残り17%で仕留める。
だから、迷い無く進める。
ステュムパリデスのイメージは某カードゲームのRRです。
やぶ蛇アルティメットファルコンは未だに覚えているやらかし……。




