2VS2そして1VS1&1VS1へ
「よってたかって婦女子を虐めるとは感心しないな。
どれ、私も参戦させて貰おうか!」
鉄鋼の翼を羽ばたかせ、猛禽から声が聞こえる。
「視認は2人。 巨腕は伸縮、予備動作極小。もう1人は枯れ木に寄生して手足の延長として動かします。」
「簡潔な情報共有感謝だ。では、そこの豪腕君には私の操る鋼鉄鳥弾の相手になって貰おうか。」
無機質な目が光った。
その言葉への返答は2つの拳で行われた。
輝く夜空を身に纏い、音もなく空に浮かぶ。
自称そこそこ天才謹製の魔道具、『宙闊歩する不思議な魔女』。名称が長いので通称『W.W.W.』。
魔力を固体にして線維化。それに幾つかの術式を付与しただけの代物。だが、性能としては
1.魔法行使の際の動力及び制御補助
2.装着者に対する予期せぬ干渉の遮断
3.移動能力
以上3つとなっている。
あの怪植物を相手にした時に猛威を振るった魔道具であるだけでなく、シェリー君の弱点である身体能力や機動力、そして魔力の少なさをカバーし、より高度で柔軟な戦術を可能とした可能の幅を広げる鬼札だ。
「さて、ここで油を売る訳にもいかない。」
「そうですね、短期決戦で参りましょう。」
自称そこそこ天才が大腕を引き剥がした。こちらの目の前……いや目の下だな。
目の下に立つのは寄生樹に寄生されて他に寄生する能力を獲得した堕ちに堕ちた皮肉な多重寄生物。
「下らん八つ当たりのつもりだろうが、残念ながら屈辱を重ねることになる。」
「これを私に託して下さったジーニアス様の顔に私が泥に塗る訳にはいきません。
全力です。」
今、重力はシェリー=モリアーティーを縛らない。
今、魔力はシェリー=モリアーティーを縛らない。
今、風はシェリー=モリアーティーを押し上げる。
多重寄生生物がそれぞれの手で枯れ木に触れ、仮初めの異形が枝を伸ばし、蠢き出す。
止まる事無く風を切り裂き続ける。
肥大化した腕はその部分が元々そうであったかのように、俊敏に両の拳を右へ左へ上へ下へと繰り出す。
当たれば人間の骨が砕けてそのまま臓物を圧し潰す。鋼鉄と言えど、屑鉄の塊にされるのは必至だ。
そう、当たれば、だ。
「当たらない当たらない当たらない!この程度ならば当たりようがない!」
鉄鋼の体に魔法の動力。猛禽を模した姿の魔道具はしかし、その姿が先程から見えていない。
製作者の『家』同様に透明になる機構を組み込んでいる?否、そんなことはない。
先程から姿は堂々と見せている。だが、映らない。
鋼鉄の翼は先程から音と鈍重な怪物の拳を置き去りにして、翻弄し続けていたのだから。
『鋼鉄鳥弾』
ジーニアス=インベンターが作り出した魔道具の一つ。
昨日勢いで作り、今日のお昼に『ホーキュリー』という名前にしようと考えたところ丁度良い逸話があったのでそれにあやかった名前にしました。
安直な名前ばかり付けている訳ではないのです!
ブックマークといいね、ありがとうございます。SNSのアニメ視聴報告や宣伝も見ています。感謝しています。




