看破する力(偽装能力由来)
「無事到着したよ!元気にしてたかい!」
「前より少し身長が大きくなったんじゃないかなぁ?」
「女の子にその褒め方はどうなんですかい?」
残念なことに3人組が村に無事到着してしまった。
笑いながら荷台に腰を下すようにして降りる3人に気が付き、駆け出して、抱き締めた。
「無事で良かった!」
その目には涙が浮かんでいた。
「な、なんだい?そんなに恋しかったのかい?」
「はは、しっかりしていると思ってたけど、まだまだ子どもだよぉ。」
「そんな顔をしないでくだせぇ。どこへも行きやしやせんから。」
3人組は動揺しながらシェリー君の様子に混乱しているフリをしている。
悠々と馬車に乗ってやって来たように見せている3人組。
君達3人と出会った頃ならば、これで十分誤魔化せていただろうが、生憎とシェリー君には私の持てる知識と技術を伝授してきた。
魔法に関しては今のところ未だ門外漢故に改良の余地はあるが、それ以外の知識や技能に関しては一角の力を与えられたと自負している。
普段ならシェリー君を見付けた途端に走っている馬車からでも飛び降りてこちらに駆け寄ってくる3人が荷台に腰を下ろして降りるような、つまりは足腰への強い衝撃を避ける様な真似をしていたら、さっきまでどれだけ体に負担の掛かる危険な運転をしてここに向かって来たのかと想像を巡らせる事が出来る。
馬車の車輪を見て真っ当な道を進んでいたならば本来絶対に付着することの無い土や小石を発見したら、どんな道を通って来たか、具体的なルートを描く事が出来る。勿論、それが正規ルートでなく、崖から落ちる様な無茶苦茶なものであったとしても、だ。
駆け寄ってくる3人の動きが少しだけぎこちなく、表情が作られたものであり、そして汗をかいていた形跡を服に見出せば、過酷な道中を穏やかな道のりだったと言い張って、こちらを心配させまいと嘘を吐いていることくらいは看破出来る。
舐めるなよ、シェリー=モリアーティーは成長している。
邪悪や暴力に屈して諦め、逃げる事も出来なかった頃とは違う。
無力を嘆き悲しみ、その上で克服するためにここまで研鑽を重ねてきた。
そんな間抜けな嘘程度、見破れない訳がない。
「なんだい、もうバレちまったのかい……」
「やっぱり土台無理な話だったんだよぉ……」
「しかし、足掻かずに諦めて白状する……なんて、出来たんですかい?」
「無理さね。」
「無理だよぉ。」
今のこの連中にそんなことは出来ない。
「出来なくていいです。
皆さんが、無事こうして居てくれれば、私はそれでいいです。
だから、絶対に無事に帰って来て下さい。無理をしないで下さい。皆さんが傷付くことが、私は怖いです。」
その時の3人の顔は見ものだった。
『無理しない』を実現出来るかは別問題だが、ね。
この3人、モラン商会結成時の事件に巻き込まれていないのに自分から飛び込んでいます。だから他幹部とモチベーションの根源が少し違います。
ブックマークと評価が増えていました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。




