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商人の根回し

 根回しが着々と進められていく。

 「三人を待っている間にやることは沢山あります。我々に許された時間は限られているのですからね。」

 他者に働くよう促し、そしてそれ以上に自分が動く。


 既に招き入れる予定の面々には既に声を掛けて話は通してある。だが今回予想外の出来事を考えて安全が確保出来てから来てもらうことにしよう。

 連絡を取るべき相手の名前が頭の中でリストになる。


 物流に関しては森の木の実やキノコで当分凌げる。でもその分の人手を確保しておかないといけないか。

 木の実とキノコの必要数をざっくりと計算し、今までに得たスバテラ村の人々の情報を巡らせて適材をピックアップ、簡易の指示書を書く。


 呼んでおいた警備官の人々に全て話す訳にはいかない。かと言って武装している警備官は恰好の()になりかねない。それとなく武装の変更と警戒を促しておかないと……。

 これは頭の中で誘導用のシナリオを考える。


 副会長には伝えないといけないし、最悪に対する備えに使えそうなルートとマニュアルも伝えないと……緊急用の暗号通信だから複数枚手紙が必要になる。

 これに関しては後で手紙を書くしかない。


 さて、その間も町の流れを滞らせてはいけない。今は未だ安定していない状態で滞るだけで致命的。けれど下手に大掛かりな行商人を呼び寄せるのは悪手。そう言えば太陽揚げの新味開発をかなりの数やっているという話は聞いたから、それを丸ごと利用して太陽揚げコンテストということでやってもらうとしよう。

 『太陽揚げ新味コンテスト』という仮題で企画書を作る。

 出来るだけ来た人が町に滞在するように促して、出来るだけ外からの入りを抑えず抑えて、三人が見回りを終えて、この出来事は内々で無事処理して、そうして、その後……。


 商人は仕事をしながら未来を見る。

 出来立てのこの町が雨風に曝されて、町として人の営みが馴染んだ風景を見る。

 その風景に在る来客は、今のようにこの町を異質なものや新しいものとして食い入る様には見ていない。

 その風景にある町人は、今のようにこの町を最後の賭けと定めて血走った目で、死に物狂いで動いていない。

 そこにあるのは穏やかで温かく明るい日常。

 この町が自分達の介入無しで巡るようになって、自分達の力で栄えさせられるようになって、我々の良いパートナーになって、人々が笑ってより良い明日を楽しみにするそんな光景を、想像する。

 自分には天地を引っ繰り返す様な超常の力は無い。その光景は自分一人で作り出す事は出来ない。

 けれど、人の力が重なり繋がり合って出来る『商い』というものには少々心得があって、その商いでこの光景を作る道筋は見えている。

 「見えたのであれば本物が欲しい。人間は欲に生きる人間です。

 だから、あの光景に手を伸ばせる。」



 ラジオに送る原稿が、未だ、書けていない。

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