ろくでなし達の因果応報
「…………………」
トーレーはスバテラ町に堂々と足を踏み入れて悠々と闊歩していた。
『面の皮が厚い』・『恥知らず』・『どの面さげてここに来てるんだ?』という視線を村の人間から向けられているが、彼は気付きもしなかった……。
堂々と道の真ん中を我が物顔で歩く。
活気があってそれなりに物もある。
出来たばかりだから当然と言えば当然だが廃屋やボロ屋もない。
夜も街灯があって明るく、見回せばなかなか悪くない建物ばかり。
おまけに町の中心には今まで見たこともない明かりが灯っている
このくらいなら慎ましい自分が住むに相応しい場所だ。及第点をやってもいい。
あいつら3人は面倒なことを言って気に食わないだの誇りだのなんだのとギャーギャー喚き散らすだろうが、それならそれでまぁいい。
妙な意地を張って目の前のお宝を手にしないなんてバカだバカ。
どうせあの邪魔な女はすぐに消える。
残るのはこの町だけ。これだけあれば一儲けや二儲けくらいなら造作もない。
あんな廃墟もどきはバカな負け犬にお似合いの場所だ。
慎ましい俺は足りない頭の連中と縁を切って過不足無いこの町で生きる。
身の程知らずの品定めは続く。
老若男女、見知らぬ顔が沢山見える。他所から来た連中だろう。
どこかの声のデカい野蛮人よりも大きな体で強そうなのと何人もすれ違った。
どこかの自分が偉いと威張りたいチキン野郎とは違って自信と能力に満ちているだろう奴を見かけた。
どこかの面倒な話し方をする奴よりもハッキリと堂々と自分の意見を述べそうな、弁の立ちそうな役立ちそうな奴も見かけた。
そして、村長のところのアイツより気立てが良くて綺麗な女も居た。
慎ましい俺の人生を彩るには丁度良い端役が山ほどいる。
さぁ、アイツらはもう切り捨てて、より使える奴と一緒に慎ましく俺が幸せな人生をまた始めよう。
両肩を掴まれた。そう思っている内にあれよあれよとどこかに引っ張られていく。
「え?」
足が地面から浮いている。町の造られた景色が遠退いて、自然の光景が広がっていく。
「え?」
あっという間に俺の慎ましい人生が広がる町が見えなくなった。
「え?」
やっと止まった。10秒ぶりくらいに足が地面に着く。
一体何が起きた?
「トーレーってさ。生意気っていうか、傲慢だよね。
自分が俯瞰でものを見ているとか、自分は一歩引いて一歩先を行っているとか、皆じゃなくて自分の方が選ぶ立場だとか、当然のように思ってない?」
切り捨てる予定の声が聞こえた。
「ま、そんなことこっちからしたらいいんだけどさ。僕の役に立てばどうでもいいんだから。」
目の前が真っ暗になった。
評価とブックマークいただきました。ありがとうございます。
本作のモットーは因果応報です。ちなみに因果応報自体は悪い意味ではありません。が、本作は積極的に悪い意味で因果応報が横行します。




