洗濯機の構想だった
それは自分に開いた穴を塞ぎながらその逆側で地中の根の中からとあるものを取り出していた。
それは馬車から転げ落ちた蓋付きの人程の大きさの黒い箱。人間の方はさほどだったが、こちらの方は興味深い。
周辺に一緒に付いていた装置を見るに、作った者は独学でやってきた者だろう。荒く、危なく、そこにたくさんの無駄がある。はっきり言って不細工も甚だしい。
最初は分解することを考えていた。バラバラにして使えばこれも役に立つだろう。そう思っていた。
だがそれは間違いだった。
細い枝をあちこちに走らせてその術式と構造を把握する。
主に使われている術式は『水流操作』と『気流操作』。蓋は異様に気密性が高く水が漏れないようになっていて、箱の外側に繋がる何かを流す目的と思しき管がある。
発動すると『箱の内側の空間内で水と空気の流れが合わさって渦を巻いて攪拌する』。そんな魔道具を意図して製作したのだろう。
だが、意図しているものとは違うものが出来上がっている。
術式の発動範囲を箱の内側の空間に指定しようとして、誤って箱の外側が範囲になっている。
箱内部で攪拌することを前提としているから精密な制御はされていない。
これを作動すればこの箱を中心にして周辺が吹き飛ぶ。この出力なら石くらいなら切断できるだろう。
箱は内部でその水流を抑え込むこと前提だから頑丈に出来ていて自壊することはない。
高出力で持続性もある。周辺に激流を撒き散らすだけ撒き散らして周囲を切り刻む。
とんだ兵器だ。
そんなものを作る気は無かったのだろうがこれは使える。
枝を更に多く深くにまで走らせて書き換える。
これは使える。
「無事を確認しましょう。『ヤバレルファミリー』や『ハウズデイラボ』の無事が解れば最悪の事態を考えずに済みます。」
「そうでなくとも法則を確たるものにする必要がある。
仮定がその通りだったら狙われる連中が来ないようにする必要がある。
仮定が間違っていたら、その時はまた考え直す必要が出てくる。」
「であれば、私の出番ですかね。情報を拡散したときにこの辺りの主要都市に繋がりがありますから、そこで人の出入りを確認しつつ、ここに来るまでの道を誰かに走ってもらいましょう。
何か別のトラブルでここに来られていない可能性も、否定はし切れないので……。」
あまり明るい表情ではない。期待はしてないという表情だ。
「リスクがありませんか?その、もしあんなものが街道に蔓延っていたとしたら……」
「その辺は心配ご無用です。とびっきり足の速い伝手がありますので……」
にこりと商人が笑う。だが、私はその伝手を歓迎しない。
アニメ5話。この後です。よろしくお願いいたします。




