銃を枝にして
面倒な事になった。個人的には愉しみでもあるがね。
「厭な予感的中か………ちなみに、その2つの人数と何を持っていたかは?」
「改めて聞いた話によると『ヤバレルファミリー』は馬車が5台。最低でも20人以上いたという話でした。『ハウズデイラボ』は……バラバラに来ていたので正確な人数は……ただ、少なくとも4名以上、大きな荷物を運んでいたという話でした。」
「多分、手ぶらじゃない……か。面倒くさい。」
ただの暴走族の『ファストーフレーサーズ』、物騒極まりない事をするが脅威度自体は大したことの無い『凡人の会』、そして植物の研究をしている比較的まともな『ウィグベスト』はこの村に来ている。
逆に物騒極まりない魔道具で武装している連中の『ヤバレルファミリー』や悪意無き殺戮兵器製作所の『ハウズデイラボ』はこの村に来ていない。
アレに本当に知能があったとして、危険度や脅威度を理解して、その上で襲撃していた場合、脅威となり得る物を狙って襲っているということになる。
治安維持のために襲ってくれたというのなら大歓迎だが、そうでないなら……だ。
嗚呼全く、確証の無い情報で楼閣を建てようとするような愚行。まったくもって嫌になる。
鉛の弾や鉛ではない弾が身体に刺さっている。痛みは無い。それは今まで無かったものだから。
それは手足として動かせる。自分のものという感覚があって五感も通っている。だが痛覚は無く、自分なのに『もの』を動かしている感覚が湧いてくる。
枝先で周辺を抉りながらそれを取り出す。痛みは無いし恐怖も無い。
赤、青、黄色、緑、黒、白の弾丸。そして氷や熔けた金属の塊を枝に絡みつけて目の前に並べる。
痛みは無いし恐怖も無い。けれど役立つと思った。
これが自分だからなんという事はなく止められたし敵ではなかったが、そうじゃないものに使ったら十分強いし恐怖になる。
20を超える枝が伸びる。あちこちに血が付いた目付きの悪い奴らの腰や手に収まっているそれを近付けて見る。
形は様々。けれど共通して穴が開いた筒があって、使う連中は皆こちらに穴を向けて指先を曲げて筒の根本についた部品を引っ張っていた。
指代わりの枝が引き金に伸びて、奪い取った内の一つを引く。
破裂音が響いて、何かがぶつかった。
ぶつかったものの正体は魔法で強化された金属製の弾丸。豆粒ほどの大きさしかないそれはしかし、爆発による推進力と弾丸自体の強度で人の肉を抉り臓物に穴を開け、骨を砕く。
胴体に直撃した。
左胸に直撃した。
痛みは無い。
穴は開いたが問題無い。また塞げば良い。
弾丸が通り抜けた風穴の中で何かが蠢き、塞がっていく。
そこに赤く流れるものはない。
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