爽やかな朝のために
面倒なことになった。
この町には沢山の事柄がある。そしてその中で最も注目されている事柄は2つ。
1つ目、スバテラ町の安定化を図ること。
2つ目、アスラルに似たあの植物の出所を発見、始末すること。
1つ目は村人にとってもシェリー君にとっても重要なことだ。特にシェリー君にとっては急務である。これを成さなければ学園の課題に悪影響を及ぼす。
そして、2つ目は村人にとっては重要だが、実はシェリー君の立場としてはどうでもよい。
あれが未だうじゃうじゃいて、この町や村人を喰い物にしたとて、それが露見しなければシェリー君の課題に関して害はないのだ。
寄生された連中を観光客に見せずに処理してしまえば何ら問題なく課題は無事終えられる。
その後?知るわけないだろう?喰い尽くされても赤の他人だ。責任は無い。そもそもシェリー君がここで何かを成して利益を出したとしても村のものになる。タダ働きに義務も責任も無い。命を削る意味なんて無い。
「………………………………」
黙ってこちらに冷たい目を向けるシェリー君が居る。だが譲らずに話を続ける。
「事実だよ。冷酷で残忍で無慈悲だと謗られるだろうが、それは決して譲らない。
我々は学園の課題で来ているだけでこの村の人々を助ける義理は無い。金を貰ってコンサルタントを請け負う契約を結んではいない。
あくまで課題の遂行をすると村人を助けることに繋がるというだけの話だ。
ついでなんだよ、それは。
無償の善意なんて成り立たない。無理矢理成り立たせたとしてもすぐに倒れる。無償に見えているだけでそこには何か得るものがなければならない。
奉仕には対価が必要だ。奉仕に足る対価が。また奉仕をする理由が。
それが物質にしろ、物質でないにしろ、必要だ。
君にはこの後一生懸命目の前の事柄に向かう『理由』が必要だ。改めてになるが、『理由』を言っておくんだ。
この後は私もすべてを見通している訳ではない。そんな事柄に未熟な君が手を出すのだ。不用意に出した手を焼かれる恐怖は抱いておく必要がある。そして、焼かれない為に全力で事を成すという覚悟も抱く必要がある。
あの化け物を詳らかにする意味は何処にある?
始末する理由は何処にある?
理由が言えないのならば寄生された人間を始末して死体を隠すための場所を用意することだ。
私が綺麗に消してやろう。それが元々いなかったことにしてやろう。」
「教授、脅かして頂くのは結構ですが、理由はありますよ。
先ず、あの植物が我々の回収したものと同質か類似したものであれば、あれは我々にとっての『サンプル』になります。
29個の種子だけでなくそれ以外の、発芽したもののサンプルが手に入ります。これは非常に大きな意味を持ちます。
それに、こうして調べている内に私がマスクリン様の様な方を介抱すればそれは経験になります。そして私は彼らを助けた恩人になれます。
それは、無駄ではないでしょう?」
「言うじゃないか。」
「それに、私は人を見捨てて明日の朝、爽やかに起きられる自身がありません。
明日も胸を張って皆さんに紹介出来るシェリー=モリアーティーでありたいので。」
本日深夜、アニメ最新話がやります。
ここまで読んで下さっている方々は今日の内容、薄々察していますよね?
お楽しみに!アニメでも●●効果があってほしいです!




