異形の大男
短期決戦。ただし本体を極力傷つけないようにすること。
孫娘が寄生された時、魔力を吸われて死にかけ、数日はまともに口も利けなかった。
自称そこそこ天才の設備はあの時よりも充実していると言えば充実している。前よりもより良い手が打てるだろうが人の身体の方には限界がある。
消耗した者が快復して尋問出来るようにするまでの時間と手間が惜しい。
この寄生植物がこれ1つならここで始末してあとはこれの目撃者を見つけて穏便な方の口封じ。あとは万一に備えて情報統制に勤しめばそれで終わりだ。
だが、更地にした後に見たあの寄生植物や更地の肥やしになった巨大植物がその辺に蔓延っているのなら一分一秒が惜しい。
また目撃者が出て実害が出て、噂なんて立てられたら今までやった手間隙が全て台無しになる。モラン商会から借りている額分だけマイナス。
何より、一度心を折られ、シェリー君が散々世話をして焚き付けて、それで今やっと立ち上がり始めたとろこだ。
ここで折れれば無力感を学び取って再起不能になる。
シェリー君の課題も当然……台無しだ。
さて、これはどんなレベルの脅威か?
森ごと吹っ飛ばしたあの怪物と同等の脅威なら、文字通りの根絶は想像を絶する苦行となる。
W.W.W.は使えない、自称そこそこ天才の家に特攻させる事も難しい。何より更地はもう無い。この辺りの建物が如何に頑丈であろうと中に居るのは生身の人間。森の奥深くか地下深くで吹き飛ばしでもしない限りローストヒューマンの出来上がりだ。何よりそれをやれば目立つ。今町の中にいる連中を堰き止めることは現実的ではない。
逆に、孫娘に寄生したものならば、引き剥がせばそれで終わる。
だがあれは違う。孫娘を肥料にしていた奴は地に根を張っていたが、これはそうではない。少なくとも今、大男の足と地面との間には既に死んだ木組みの大きな建物が挟まっている。根を張る場所が無い。あくまでこれを『常識の植物と考えた場合』の仮定になるが
、ね。
人を肥料にする樹木ではなく人を樹木とみなして寄生するヤドリギのような別種のもの。あるいは孫娘を殺しかけた樹木は本来成長すると人に種を植え付けてあちこちでそれをばら撒く様になるのか。
どちらにしろ衣服に阻まれて人と植物部分がどう組み上がっているのかが明確ではない。引き剥がすなら最低限そこを知らねばならない。
ああ、だが面倒だ。あの堅牢な肉体と異形がどういう形であれ一つのものとして成ったなら面倒この上ない。
私の持つ対人技術の礎は人体が人体としてあること前提。魔法という変数があることを念頭に改良したがこれは魔法の法則においても異形。
投げ技の類は重心の前提から変える必要があり、締める極める類は狙う場所次第ではこちらがカウンターを喰らう可能性を考える必要があり、打撃技は狙う場所を間違えればこちらの腕が肥料にされる。
さてどうしたものか。
と考えてみたが、それは杞憂だった。
異形の大男は殊の外弱かったのだ。
ゴ〇リキ一を通信交換……宿儺……角者阝……ゴア・マガ〇……いいえなんでもありません。
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