ヒロインが助けに来た?
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パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ………………響き続ける耳障りな拍手喝采。だが本当に誰かが拍手をしている訳ではない。地面に散った破片が弾けて跳ぶ音がそう聞こえるだけなのだが、靄がかかり始めた頭にはそれが皮肉の拍手に聞こえて腹立たしい。
しかし、今の自分にそれを止める手立ては無い。もう耳さえ塞げない。
拍手は更に激しくなり、ある破片は右に、ある破片は左に、ある破片は上に、激しく跳び上がる。
そうして跳び上がった破片は他の破片とぶつかり合い、空中で繋がり、合わさり、大きくなって、大きくなった破片が更に別の破片と合わさり、更に大きくなって、徐々に一つに、一つに、一つになっていき、その過程で砕かれた破片の間に倒れていた無抵抗の筋肉達を呑み込んでいき、最後には一つの塊になって、変わらない元通りの一つに戻った。
先程まで渾身の力で砕いていた光景は幻覚だと言われればその通りだと思えてしまう。これで今まで皆でやったことが意味の無いものになった。
眼球だけなら未だ辛うじて動かせた最後の一人の自分にはそれが見えてしまった。
自分達が最初から敗北していたことを。
先刻までの行動が相手にとって取るに足らない無駄な足掻きだったことを。
自分もこれからあれに呑み込まれることを。
失意のどん底に叩き落とされ、屈辱と辛酸を味わい心が崩折れゆく男。
監獄は相変わらず展開され、逃げる力も手立ても残っていない。
これまでだと、そう思って頭を地面につけたその時、監獄に穴が穿たれた。
「女?」
薄明かりに照らされて辛うじて見える華奢な影と風に靡く長い髪からそう判断した。
「間にあった、逃げましょう!」
女は生きている監獄に迷い無く足を踏み入れ、襲い来る攻撃を弾き飛ばし、自分の三倍もあろうかという巨躯を担ぎ、殆ど足の動かない文字通りの足手纏いを監獄からあっという間に引き摺り出した。
「生きてますか?言葉は聞こえてますか?体は大丈夫ですか?痛みはありますか?」
体に残っている欠片を叩き落としながらこちらにそう声を掛けてくれる。
瞼が重く、薄暗く、外に出たはずなのに異様に暗く感じられる。
「………………」
声を絞り出そうとしたが、自分を助けてくれた恩人を一目見ようと目を凝らす。
風に靡く夜空を溶かしたような髪、懸命に奮い立つ華奢な身体、鈴の様な穏やかな声………
深く深呼吸して、息を整える。止まりそうになっていた心臓から音が響く。
指先を動かそうとする、力も弱く鈍いが人の首を握り潰すには十分だ。
「ッ!」
華奢な影の首を掴み、一気に握り潰した。折れる感触が伝わってきた。
もうストックが尽きました。続きはこれから書きます。




