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非の無い槍先を

 淑女の刺客は随時募集中です。人外でも構いません。

 「死にさらせ!」

 彼女が案内された場所に到着すると同時に、会話の余地無き紫電一閃!

 屈強な男の振るう雷を帯びた槍の穂先が襲い掛かってきた。

 穂先に触れただけでも絶命する致死の一突き。それが微動だにしない彼女の額、紙一重寸前で、止まる。

 「だが、死ぬためには準備が必要だ。そのために……これをお前にくれてやる。」

 そう言って取り出した槍を突き出す。

 「これは?」

 「我が手にある名槍、雷鮫(らいこう)。それと全く同じものだ。我が槍を前に得物無しでは相手にならん。真正面から挑み、最高の武具を持った相手に正々堂々死を与えねば我が武勲は全て無意味。さあ持て、そして我が一槍の前に死ぬがよい。」

 「槍、ですか……構いません。ただ、拙い腕ですので、悪しからず。」

 そう言いながら渡された得物を持つ姿は、無双の槍術使いのそれだった。

 「いざ尋常に、勝負!」

 果敢に立ち向かう様は魔王に挑む勇者だった。


 魔王はどちらか?言うまでもないだろう。




 魔王の槍は思わず驚嘆するものだった。

 槍が嵐の目になっている。

 生半可な一撃二撃では近寄ることさえ許されない。たとえ出来たとしてもあっという間に膾切りにされる。

 その足捌きは捉え難く翻弄する動きで、そして振るう槍をより捌き難い致命のものにする。

 足が直接自分の臓腑を捉えることはないが、当たらず当てに来るそれは致命的な脅威として、十分な一つの武術として成り立っていると言っても過言ではない。


 そして何より……


 雷鮫は全長2.21m、穂先27㎝の金属製の槍だ。

 重心は穂先に偏り安定し難く、目の前の使い手よりも明らかに大きく取り回しは困難を極めるはずだ。

 本来なら……

 相手の雷鮫が唸りながら横薙ぎにせんとする。

 鋭いその一薙ぎを本能が辛うじて避けさせる。

 槍の間合いの外、ギリギリ避けたと思った。

 鎧が裂けた。

 穂先は完全に避けたが穂先から伸びる見えない無数の刃が鎧を捉えていた。

 この刃は今まで自分が出会ってきた獣の牙や爪よりも余程鋭いらしい。

 しかし、裂けた鎧に驚いている暇はない。

 薙ぎの後に突き、突き、突き。軌道が読めない嵐の牙が無数に飛来する。

 それを終始一貫片手(・・)で行っていた。

 「良い槍です。扱い易く、それでいて望むところに鋭く突き刺せる。」

 右手一本で振るわれる牙は空を切る。

 「貴方の腕前も素晴らしいものです。

 攻めるとき、守るときの切り替えに迷いが無く、間合いを完全に把握して間合い寸前から攻めと守りを切り替え翻弄。本来綿密な計算を必要とするその動きを呼吸の様に無意識に近い形で行えるその精密動作は素晴らしいものです。」

 称賛する言葉に嘘は無い。それを捌き切っているという点に目を瞑れば純粋な賞賛として受け取れた。

 「他にもあるようでしたら、どうぞお見せ下さい。でなければ、そこをお通し下さい。」

 その言葉の直後、片方の槍は無残に砕かれ、もう片方の槍は傷一つ無く彼女の手にあった。


 懲りずにイカした製作陣のご紹介です。

 本作の監督という副会長戦慄モノの仕事を引き受けて下さったもう一人の勇者。

 古川 未来子 氏!

 フワッフワな想像図と説明力絶無の著者のイメージ以上のものをよくぞ形にして下さいました。

 私は運動音痴で人の顔の認識が曖昧で衣服に頓着の無い性質なのでそれが作った小説を動かすこと、本当に苦労されたと思います。厚く御礼申し上げます。

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