見学ツアーのモリアさん
「『疑似太陽』これは熱と光で周囲を照らすランドマークであると同時にその内部には風を利用した魔力生成装置の一部が組み込まれていて、地上と二本のワイヤーで繋がっていますぅ。
風で中のギアを回転させて、それがワイヤーを回して、地上の生成装置の本体を回すのですぅ。
あの疑似太陽はこの町を照らしつつエネルギーを供給しているのですぅ。
一度空に上げられれば、疑似太陽がエネルギーを生み出して、疑似太陽自身を上空に上げるエネルギーを生み出し、そのエネルギーで新たなエネルギーを生み出し……これを繰り返せるようになるのですぅ。」
「この装置は……これが疑似太陽の正体ですぅ。」
「この装置は……これで町の設備は成り立っているのですぅ。」
「この装置は……これが疑似太陽の正体ですぅ。」
「この装置は……これで町の設備は成り立っているのですぅ。」
「この装置は……これが疑似太陽の正体ですぅ。」
「この装置は……これで町の設備は成り立っているのですぅ。」
「この装置は……これが疑似太陽の正体ですぅ。」
「この装置は……これで町の設備は成り立っているのですぅ。」
見学ツアーが何度も行われている。
そのどれもが疑似太陽と街を照らす光の正体について明かしていた。
そのどれもこれもが投影された虚像で虚光で虚飾で、どこにも存在しないであろうものと町についての説明だった。
「これで100人にはご説明出来たと思いますぅ。」
疑似太陽付近の建物。見学ツアーが一通り終わり、モリアは一息ついていた。
「あぁ、お疲れ様です。あなたのお陰で宿泊代と見学ツアー代は黒字も黒字。予想以上です。」
閉ざしていた扉が重々しく開き、その場に現れたのは商人だった。
「いいえいえ、私は皆さんを案内してご説明をしているだけですぅ。」
「そんなことはありません。
少なくとも私にはできませんよ。あれだけの人を、あれだけの数を、私には到底……。」
「そんなことはありませんよぅ。商人さんがお膳立てして下さっているからこうしてたくさんの方々が興味を持って下さるのですよぅ。
それに、あの発明家の方が頑張って用意してくださったからリスクを最低限にあそこまで多種多様なこの町の正体が作れたんですよぅ。
私のやったことなんて、お話をしただけですぅ。」
商人が防音の扉を閉めてもなお、モリアは糸目のまま、笑顔を浮かべていた。
「いえ……その姿のままそれらを行い、そして今も事情を知っているこの私でさえ本当に信じられないこの現状は私には出来ません。
今も自信がありません。あなたがモリアさんなのか、我らが商会のおs……」
商人がモリアの正体を口にしようとした瞬間、商人の前の糸目の笑顔が商人の目から見て急に大きくなった。
「防音にしたからと油断するのはいただけませんよぉ。私はモリアぁ。この町の見学ツアーを行っているただの町娘ですよぉ。
それ以外の誰でもないんですよぉ。」
その声色、表情、しぐさ、すべてが『シェリー=モリアーティー』ではなく『モリア』のものである。
いいね、ありがとうございます。




