ここだけの話、じつは
階段を下りながらクイズは行われていた。
「はい次ぃ。」
また一人外した。
「魔石を毎日朝ポストか何かに入れて配布しているのか?それを自分達で取り付けているとか?」
「残念ながら違いますぅ。コストがかかり過ぎますし、危ないですぅ。なにより、前提が違いますぅ。」
もう一人外した。
「運んでいると言っていた。違うのか?」
敢えて食い下がる。
「はいぃ。運んではいますが、根本から『運ぶ』の意味が違いますぅ。
遠くから魔石を持ってきて、手作業で配ると、時間がかかってしまう上に、あまりにも人的な、資金的な資源がかかり過ぎますぅ。費用対効果が釣り合っていないんですぅ。
何より、魔石の流通が途絶えたらおしまいですぅ。
もっと簡単で沢山、そして何より皆に使ってもらえるようにこの町は出来ていますぅ。」
答えは分かりきっている。だが直接的にあれが何かを訊くのも躊躇われる。
とはいえ、よくもまぁ化け物の噂の出ている場所でこれだけのものを作ったものだ。
「さぁて、色々とお答えいただきましたが、正解はあるのでしょうかぁ?
今回は実際に見て、答え合わせをしてみましょうぅ。」
階段を下りて、土台部分にこれ見よがしとばかりに取り付けられた金属製の扉とそれを閉ざす頑丈な錠の前に向かう……のではなく、そこから少し離れた建物の中に何故か案内された。
案内役が建物の扉を開けるとき、思った以上に重そうに見えた。そして、扉が閉まると同時に外から、聞こえる、音が、いきなり……消えて、静かに、なった。
「実はあの土台部分はこの町のエネルギーを賄う装置の一部なんですぅ。正確に言えばエネルギー生成装置にあの疑似太陽は取り付けられているという状態なのですがねぇ。」
声の響き方が妙な、気がする。
響かないというか、響くはずの音が周囲に吸われているような、籠っているような、妙な……いいだろう。
「なんで皆様をここにお呼びしたかというと、実は、あの装置の疑似太陽の下にあるエネルギー生成装置に辿り着くにはあの扉からではダメなのですぅ。
鍵と大きな重い扉があるのですがねぇ。
本物はこちらなのですよぅ。」
そう言って指示した扉を開く。
重く軋むような音、全身で押しても重々しくしか開かない扉。
何の変哲もない扉のように見えて、それは明らかに外界とその先を隔てる堅牢さを持っていることがわかる。
「それでは、おたのしみくださいぃ。」
扉の向こうから吹き込んでくる風に吹かれた。
辺りを見回せば巨大な球体の中心に自分がいる事がわかる。
球体表面には星図の様な古代の強大な怪物を模した影絵のような魔力の流れが上下左右縦横無尽に走っている。
「極大複合エネルギー増幅魔法術式。それが疑似太陽を、この町を支える根幹になっていますぅ。
単体でも十二分に複雑な術式を三次元的に編んでそれを球体内部に付与して循環させるというあまりにも独自の手法を使っていたがゆえにこれの製作者さえも同じものを作ることはおろか似たものを作ることは不可能と断じ、繊細な術式と設備ゆえに移動させることも出来ないという代物ですぅ。
素晴らしいでしょう?」
偽物の空を覆う光の芸術は常に移ろい同じ形を作ることはない。
ああ、これは、素晴らしいものだ。
実は、本作のユニーク読者様が40万人を超えました。
数字が多過ぎて数字苦手勢としては「たくさん」としか表現出来ない有様ですが、これだけはわかります。
皆様が応援して下さったからここにこの数字を目撃していると。
拙い手前の作品をいつもご覧いただきありがとうございます。未だ未熟者ですがこれからも未熟でみっともなくとも足掻き続けて参りますゆえ、どうか、応援いただければと思います。
ありがとうございます。




