うらの深読みと浅読み
この村、改め町には何があったのであるか?
主様からの命を受けて来たスバテラ村改めスバテラ町。ここは不自然で異様である。
この町を一通り見てみたが、この辺り一帯の建築物は非常に豪勢である。
一見すると装飾が無く住むための建築だらけではあるもののその材質……磨かれて光沢さえ放つ木材は素人目から見ても安物ではない。そんなものだけを使って町が構築されているのであるから、それはもう豪気も豪気である。
建物の配置に関しても素人があばら家を並べた訳ではなく経験のある人間が明確な都市開発を行った結果生まれた配置に思える。
道幅は広く、綺麗に整備され、迷ったり人流が滞ったりせぬようにと道が入り組まず迷わないように出来ている上に一定間隔で街灯があり、明るい。
どうしても出来てしまう犯罪の温床たる路地裏や目が慣れる事でより深まる影を排斥した構造。すべてが表通りと言わんばかりである。
そして、町中心部に位置しているあの大きな球体街灯や先刻舌を巻いた街灯。純然たる魔道具と思っていたが、近づいてよく見てみたところ、そうではないように見受けられる。
こっそり魔法で街灯の灯りを消そうと思ったが、うまくいかなかった。どうやら火の魔法というより火を制御する魔法が組み込まれているようである。
魔力で周囲を照らしているというよりは、魔力と別で起きた燃焼を魔力で安定した状態までコントロールしているように見受けた。
何より先程から巨大な球体街灯や周辺街灯への干渉を行っている者が見当たらない。
町をこの様に明るく照らすのであれば相当な魔力が消費される。というのに、その魔力源が見受けられない。何より魔力でこれを成せばあっという間に都市機能が破綻する。
となると、なにかしらの燃料が、どこかから供給されているハズである。
巨大球体街灯……町の人々に聞いたところ『疑似太陽』という大層なお名前を持ったアレだけなら下にある奇妙な装置からの供給を考えたが、この街灯はそういった燃料や大がかりな装置は無さげ。
であれば、考えられるのは……
街灯の前に立ち、視線を上から下へと移動させ、地面に辿り着く。先程からどの街灯を見ても同じ様に根本から道の中心へと伸びる一本の線があった。
琥珀色の石に彩られている中で道の中心に一本石の道。そしてそれを主根として周辺の家や街灯へと道が伸びているのである。
「キモはこの道の真ん中にある奇妙な線、であるな。」
この道がどこから始まりどこまで続いているのか、追いかけてみる価値は、ありそうであるな。