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センチパレード 発進

 魔法は非常に便利だ。

 火打石や燃料を携帯せずとも城塞を、村を、営みを焼滅させることが出来る。

 銃弾など無くとも拾った礫で人の頭蓋を、金属の装甲を、命を撃ち抜ける。

 大がかりな鉄の翼が無くとも森を、建物を、障壁を飛んで越えられる。


 魔法は便利。なら、科学や数学は魔法を前に『役立たず』の烙印を押されるか?

 答えは『否』。

 魔法は使用者によって個体差があり、科学や数学の式や法則のように容易に継承は出来ない。

 凡才でも過去の天才と遜色の無い事を成せるそれは非常に有用なのだ。


 「セット完了。さぁ、起動!」

 自称そこそこ天才が活き活きと装置を動かすと同時にここまで運んできた魔道具が唸り声をあげた。




 町中の道の中心に張り巡らされた溝。その線をなぞる様に装置がゆっくりと動き始める。

 渦を巻く腸が振動で震え、僅かに回っているように見える。

 石板は落ちることが無いようにと安全装置で固定されている。

 それは人の歩みより圧倒的に鈍く、人の歩みよりも非常に重い。しかしその速度は一定で揺らぎが無く、滑らかである。

 4m、無機質のムカデが小さな足を規則的にカサカサと動かし、溝をなぞる様に動く。

 そして、ある程度進んだところで変化が目に見えるようになった。

 いつの間にか溝の中に、装置の前部に搭載された腸と同じものが置かれているのだ。

 先程まで間違い無くそこには無かった。装置がそこに置いたのだ。

 そう考える間も観察する間も無く装置の背中の安全装置が緩められ、一番上の石板だけが通り過ぎた道へと滑り、腸の落ちている溝にちょうど嵌る様に、静かに落ちた。

 「自動配管敷設装。名前は……センチパレードとでもしておこう。順調に稼働してくれたな。」

 自称そこそこ天才が満足そうにそう言ったのに対して、応えるように装置は目の前でゆっくりと二枚目の石板を滑り落として道の凹凸を消していく。

 「限られたこの状況下でありがとうございました。お見事です。」

 シェリー君が小さく、しかし正直な気持ちで拍手を送る。

 「いやいや、モラン商会の手配あってこれは完成しているんだ。

 実を言うと、これの構造はシンプルだ。

 一定の幅の溝の中にサンドワームの腸で出来た配管を伸ばして敷く装置、そしてその後で石板を置くだけの装置を繋げているだけ。

 まぁ、簡単に出来る。

 ただ、セットする配管の材質や質量によってはそもそもの運搬機能を底上げしなくてはならない。これが石や鉄製の配管だったら多脚ではお話にならなくなるし地面の舗装状況によっては重量制限まで考えないといけなくなる。

 何より石や鉄の配管は繋げる装置を追加で製作する必要があった。敷設にも多分もっと時間がかかっていた。

 小型とはいえ、サンドワームがあれだけうじゃうじゃあったから出来た所業だ。

 それはさておき、あれだけサンドワーム用意出来るあの商人、只者じゃないよね……何者?」



ムカデ:センチピード

敷設:レイング

配管:パイプ

この辺を合わせて『センチパレード』です。

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