予想外は怒る
サンドイッチを小さく口に運び、ゆっくりと咀嚼する。
「おいしい……」
自称そこそこ天才は残念ながら夢の中。称賛と感謝の入り混じった、無意識に溢れた言葉は聞こえていない。
さぁ、思考をしよう。整理をしよう。
この村には怪物の噂があった。その噂の正体はロクでもない理外の怪植物が埋まっていたというもの。それは既にシェリー君が灰にした。置き土産として厄介な種子を遺しているが、今回それは一度枠の外に置くとする。
そして、それを燃やした後、ガスの霧の原因が発覚した。明らかに一般人の生活を支える意図が全く無い『システム:リオニス=サクラ 』・『マナヴィード』という物が地下に埋まっていた事で、そのメンテナンス不足が原因で燃焼性ガスが漏れ出していたのだ。これに関しては現在修理中。待つ事で解決に向かう。
今、怪植物をシェリー君が燃やした際の爆発でこの村に人が来ようとしている。
あの燃え尽きた灰色のクレーターを見れば何も無かったとは言えない。追及されればこの村の息の根が蘇生出来ないレベルで止められる。故に人の力で人が壊した痕跡を人の造ったもので埋め立てて貰った。
足止めが上手くいけばこの過疎村を嗅ぎ付けて人々が殺到する前に事件現場は埋め立てられて様変わり。証拠は荒らされて遺りはしない。埋まっていたとしても建物を引っ繰り返して引っ掻き回す必要がある。
不特定多数の目撃証言たる火柱はどうしようも出来ないが、それだけならどうにでもなる。
火柱の燃料も痕跡も跡形も無く消失した今、探してもその証拠は出て来ない。
相も変わらず危険物には変わりないが、現在進行形で爆発炎上していた頃に比べれば幾分か、マシくらいにはなった。
だが、問題はここから。あくまでこの件は学園の課題。マイナスをゼロに近いマイナスにしているだけの今の状況に対してかの淑女は及第点を贈る事は無い。
ここからマイナス部分をゼロからプラスにしつつ、ゼロ部分は大きなプラスにしなければならない。
筋書はあるが、大きなプラスをここで発生させれば確実に目立つ。否、この村の状況を鑑みて目立たねば及第点にはならない。が、それも問題だ。
それだけ大事にすると目を付けられる、シェリー君を快く思わない人間に。
それだけ大事にすると目を付けられる、シェリー君をカモだと思う人間に。
妨害と将来的な危険因子を排除しつつ、ことを成す必要がある。
嗚呼、面倒だ、厄介だ、不愉快極まりない。
何より不愉快極まりないのは現状、『予想外』という言葉を使わざるを得ない事象を許容している己の無能さだ。
教授と呼ばれておきながら不確定要素に対する対策が不十分。あまりにも無様が過ぎる。
ブックマークありがとうございます。
赤髪騎士をスルーして進めると気付いていざ八日目!
え?八日目?