怠けてそうに見えて
モラン商会の練度はどのようなものか?
日は浅く知名度は未だ有るとは言い難い。大商会……ではない。しかし、順調に異常に成長している。
お陰でその業務は非常に増えている。当然幹部や責任者の業務は増える。
会長が商会に居ない今、副会長の業務は当然増える。イタバッサがスバテラ村の復興計画に参加した事で業務は減ると思いきや『そんな本末転倒な真似は決して致しませんよ。』という頼もしい一言でその希望は粉砕された。
彼が予め仕上げておいた仕事のお陰で副会長は死にかけていた。
故にこその大脱獄。傭兵時代から戦略的撤退が出来ていたからこそ、その引き際の良さと逃走能力故に彼は生き残れていた。
だが、その能力を教えた後輩が今回敵対している。
「全員、煙幕に気を取られないように!標的は障害物や遮蔽物の多い街方面に行く筈っす!」
商会周辺を覆っていたカラフルな煙幕。そこから飛び出した若く精強な追跡者達の目が光る。
「A班、標的を視認した。座標送信。」
「A班はそのまま追跡最優先で可能なら追撃を。
足止め出来なくても捕縛できなくても良い。考える隙を与えないように『避ける・逃げる』動きを強制し続けるっす!」
後ろから拙いながらも、低殺傷力ながらも避ける手間をかけざるを得ない魔法や飛び道具が飛んでくる。
飛来する悪意を避けつつ後ろに銃口を向けて弾丸をばら撒く。
耳を澄まさなければ聞こえない泡の破裂音のような銃声と共に殺傷力の無い弾丸が追跡者に襲いかかる。
命中させた。しかし、パキパキと音がして弾丸が何かに阻まれたのも解った。
撒けていない。
「新型防弾・防魔法防具『ドレットレス』。性能はバッチリみたいっすね!」
『ドレットレス』
レンが彼・彼女らの為に用意した衣服。
その性質はH.T.を転用したもの。形まで変えられるH.T.と違い、衣服という形にしたことでその自由度は失われたが、魔力を流す事で硬質化させてある程度の攻撃から身を守る事が出来るという点は高性能の一言だ。
「あの野郎……俺が忙しくしている間に妙なもの作りやがって……」
レンは暇という訳ではない。イタバッサや副会長のジャリス、金庫の者と違って特定の仕事をいつもやっているという訳ではないが、だからこそあらゆる仕事をこなす必要がある。
それはそれとして、レンという男は要領が良い。器用とも言う。
最初は人に丁寧に教えて、やる気を出して仕事が出来るようになった段階でそれを任せる。
そして自分は他の仕事に手を出して、同じように任せる。これを繰り返していた。
「皆と違って、代わって貰える仕事ばっかりだから出来る裏技っすけどね。
それに、代わった皆がよくやってくれるんでうまくってるんすよ。」
レンはそのやり方を他者に言うとき、必ずこう言う。
水龍一凸!餅武器!やった!
おかげで投稿がギリギリになりました。ごめんなさい。




