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何時から……だった?

 あのまま喋らせておいても良かったが、生憎扉を強引に開けて隙間が出来ていた。

 村やキャンプをしている諸君の安眠の為に必要な締め落としだった、アレは。

 そして、もはや意識を持たせておく必要が無いので締め落とした、アレを。

 「時間がありません。そして相手の場所はある程度判明しました。そうしたら……」

 気絶した男に猿轡と目隠しをして縛り上げながら自問自答あるいは思考の世界に入っていた。

 透明な秘密基地のマイクには向かわない。現状の命令無視での飛行とアレの態度と自爆装置からして少なくとも友好な関係性は考えられない。

 信頼出来ない輩の声が知らない声に変わって自分が今まさに爆発寸前の危機的状態……なんて言われて誰が信じる?話が拗れ(こじれ)るだけだ。

 縛り上げた男を秘密基地の床に転がし、蝶番の無くなった扉をH.T.とW.W.W.で無理矢理押し込み、身体強化で走力を上げ、行く先はスバテラ村の方向。

 「あー、アー、ア―……」

 真夜中、人々の耳に届かぬ様に小さく声を出す。最初は鈴の音の様な声が響いていたが、それが次第に低くなり、太くなり、別物に変わっていく。

 村の診療所、あの診療所に着いた頃には見た目は麗しき少女のままだが、目を瞑れば成人男性が現れるまでに変わっていた。

 「緊急事態につきノック無しで失礼いたします。」

 心は()いている。だがその動きに迷いは無く無駄も無い。

 ……相も変わらず見ず知らずの他人の為によくやるものだ。

 自分の得にはならない。どころかここで下手に手を出して見付かれば多大な損失を被る。

 それでもやるのだ。合理的でない自覚はあってもリスクになっても突き動かされる様にして行う。

 そして、毎回毎回行われるそれに対して私は茶々をいれる。

 私が授けた知識や技術は今まで彼女に出来なかった事柄を可能にしている。それが自分の衝動と自分の現実の乖離を縮めているので私は共犯と言えば共犯になるのだがね……。


 そんなこんなであれこれと準備を終えて、一度透明な秘密基地を覗いた後、今度は森の中へと来ていた。秘密基地から僅かに離れたそこには特に何もなく、ここから更に奥へと進めば出来立て熱々の更地が見えてくる。

 発信器の通りならこの場の上空には気の早いゲストが居る事になっている。

 「準備は概ね終了。風は……無風と考えて。」

あれこれ引っ張り出してきた材料を組み合わせて出来たそれに火を点け、駆け足で秘密基地へと戻っていった。

 それは所謂『狼煙(のろし)』と呼ばれるもので、古来使われていた煙を用いた通信手段である。

 しかし、煙なんてものが真夜中にハッキリ見える訳がない。

 それが雲なのか霧なのか靄なのか霞なのか煙なのかさえ、実際に吸い込んでみるまで解らない程夜は暗いから。


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