来客者は未だ来ず
三人目に対して打った最初の一手。それは二人目同様に仮の拠点を先に探すことだった。
前二人は調査に際して地上を移動し現場を目視で発見、観察する手段の他に現場を確認し、現場にある物的証拠を採集し、後程本拠地で調べるという手段があった。
しかし、飛行していてはそうはいかない。それなりの高度の空から地面まで伸び、直ぐに縮むマジックハンドを持っていない限り視覚的情報、良くて聴覚的情報が主なリソースになる。観察のみなのだ。
しかも視覚的情報に関しては夜間という欠陥もある。情報としてはあまりに頼りない。
かといって道中空を飛び、目的地上空に辿り着いたら着陸して調査し再度飛行……そんな無駄に技術を費やした無駄なだけの奇行に何の意味がある?
折角の空を飛んで視認されないメリットも地上に降りては『空を飛ぶための格好』という目立つ格好をする不審者に変わる。もっと言えば着陸・調査が終了した後に再度空へ飛ぶまでに誰かに目撃・妨害されて捕縛されたら笑えない道化となる。
少なくとも、こんな時間に空を飛んで偵察しようなんて連中だ。空を飛んで眼下の光景を後で口頭にて報告……なんて終わり方はしない。そんな失笑道化もあってはならない。
ではどうするか?人間の目と耳がアテにならないというのなら、空を飛ぶ輩に別の目と耳を付ければ良い。
自称そこそこ天才が中毒事件の時に寄越した遠隔操作の魔道具。あれの劣化版という訳だ。
そうなると、『記録した情報を空の上で保持する必要性』か、『地上にすぐに送る必要性』が出てくる。この場合であれば『空の上で保持する必要性』は考えない。その場合は空中で発見されて撃墜或いは事故で転落した際の記録回収が困難になるからだ。
『地上にすぐに送る必要性』を考えると、受信装置を見られない最低限度の空間と輸送手段が必要になるが、飛んでいる輩が失敗しても情報は回収出来るという翼を切り捨てても痛くないところが利点だ。
何より、それだけの設備を用意すれば自ずと飛行装置の置き場所や地上で怪しまれないために普段着に着替える場所も兼ねる事が出来る。
「そう考えると二人目の設備よりも大きいだろう。」
「迷彩柄の布程度ではどうにもなりませんね。距離も離れているかもしれません。」
「そこまでの設備を用意するとなれば隠す手段も上等なものになる。例えば、幻燈の魔道具を使うとかね。
あぁ、距離に関してはあまり遠くまで考えない方が良い。下手に距離を離すと情報の送受信が面倒になるからね。徒歩で見つけられる距離と見て良い。」
「では、何処に………見付けました。」
探しながら考え、歩く。その目線の先には街道の轍があった。
淑女回でもないのに、PV数が、ブクマが、いいねが伸びている……だと?
ありがとうございます。