翼を捥がれた鳥は落ちて
今回の引用サイト
https://www.jac.or.jp/oyako/l403060.html
https://media.kepco.co.jp/study/17640351
評価とブクマ、いいねありがとうございます。後書きに別のものを書く関係で今日はこちらで失礼いたします。
空飛ぶ相手は撃ち落とせば良い。
翼を捥げばあとは勝手に重力が叩き潰してくれる。
問題は、シェリー君がその手法で相手を潰すことを是としない事と、翼を捥がずにどう落とすかだ。
夜闇の中、相手が今何処を飛んでいるかについては星空模様で大まかな位置は解るが、距離が掴めない。
照明弾を使って目眩まし?馬鹿な、向こうも見つかるがこちらも一発で発見される。
おまけに村の人間に目撃されるリスクがある。勿論村の外の人間に見られれば商人の足止めを強引に破って来る連中に文字通り根掘り葉掘り掘り起こされる。
穏便に上の輩にはイカロスになって貰おう。
『視界不良だ。さっさと雲から出ろ!聞こえないのか!』
「………」
五月蠅くて仕方ない。
私が時間と手間を掛けて作ったものを自分達で作った勝手なルールで奪い取って命令して、ふざけるな。
なんで自由のために作ったのに不自由になるの?
『おい!さっさと出ろ!状況が変わった、戻ってこい!着陸しろ!』
「………」
折角久々に空を飛べているのに戻る訳がない。
ここは私のもの、私しかいない、私の好きにさせろ。
雲の中、私は羽を思いっきり伸ばす。
『命令を無視するな!さっさと高度を落とさないと……大変なことになってしまいますよ?』
耳に取り付けられた『口』から聞こえる高圧的な声が別のものに変わった。誰だ?
頭の中がチリチリした。それは厭な予感がするとか不安とかそんなものではなく、本当に頭の中でチリチリと何かが燃えて頭の中を燃やして、それが体に燃え広がっていって、体が……なに、これ?
心臓がドキドキする。肺一杯に吸い込んだ冷気で冷えていた手足が脈打ち、熱くなる。そして、吐き気がして、翼を上手く制御出来なくなって、徐々に地面に近付いていく。
『おかしいと思いませんでしたか?貴女の今居る高度に雲なんて有る訳がないんですよ。
さぁ、安全装置があるなら直ぐに作動を。』
ドキドキする心音が耳元で響く。その後ろで馬鹿なことを言っている奴が居る。
この翼は私が作り上げたもの。勿論、折角の自由を得て直ぐに死んでは困るから安全装置は取り付けた。
『こんなもの無駄だ。重さは最低限で速さと機動力を重点的に。耳と目があれば後はどうでもいい。落ちても別に構わん。』
そう言いながら汚い手で私の翼を弄んだのはお前達じゃないか……
必死にバランスを取って安定させようとする。しかし、体は上手く動かない。このまま落ちれば無事じゃ済まない。
あぁ、私は結局、最後まで不自由なまま終わるんだ……
「させませんよ。」
地面がどんどん近付いていく中、そんな声が聞こえて私は何かに抱きかかえられた、気が、して……………
ヒロインが颯爽と現れ、空から落ちてきた翼ある少女を空中で抱きかかえて着地。そんなシチュエーションはお好きですか?