残りは一人、それは上に。
良いタイムだ。
最初の男は特に苦労も無く呆気無く制圧出来た。
二人目も本体の隙が大きく、叩けば損失無く終えられた。しかもお粗末とは言え、元々隠してあった。そのまま気絶した男を拘束して放置しておけば良いので時短になった。
「その代わり、面倒なものが未だ残っているのでどうしたものかと思案中だ。やれやれ。」
空を見上げると星、星、星、星、星。
地上に明かりという明かり、天地の間を阻む無粋な代物が無い事で空がよく見える。
そして、よく見れば星々が時に光を失う事が解る。連続した軌道を描くように、星の光が消え、また輝いたかと思えばその隣の星が消え、それを繰り返している。
「随分と長い間飛んでいますね……」
最後の客人は空からの来訪者。しかも星の途切れ方からしてかなりの高度を維持したまま長期間旋回している。
「悪くない性能だ。綺麗に落として外側だけ引き剥がしてしまえば接収出来……おいおい、そんな目で見るのは止して欲しいものだ。」
シェリー君が私の強奪に目で反論する。勿論する気はない。
あの精度の物は図書室ではお目に掛かれなかった。少なくとも市井に溢れている汎用技術で出来たものではない。
そんなものを流用・改造すればあっという間に足がつく。
(技術や技能は暴力よりも忠誠心や金で従わせて自発的に吐かせる方が余程良い。
その点シェリー君は素質と見込みがある。
あの仏頂面の棟梁や例の商人、三人組を見て解る様に、シェリー君は忠誠心や情で相手が喜んで働く様に仕向けている、自覚はないが。)
「随分と、有意義な事柄をお考えなのですね。教授?」
夜道を歩きながらこちらに目を向けず意味深な言い方をする。はっはっはバレた。
「そうだね。実に有意義だ。少なくとも私の元々持っている記憶をさらってみたが、滞空している相手に対して有効に明確に働く方法は一般的に確立されていない。」
思い出そうとして頭痛が襲い掛かる。頭蓋を強引に割り砕き、中に熱した金属を入れて掻き回されたとてこんな気分にはならない。
少なくとも、この意味記憶が成立した状況では人類が『飛行する』・『滑空する』という概念はあっても一般的に広まる程の大した進歩はしていなかったと見て構わない。
「『一般的に確立されていない。』という事は、『幾らでもやりようはある』と考えて宜しいのですね?」
私の言葉に対してシェリー君が先程までの訝しむ視線を止めて少しだけ悪戯っぽく笑って見せた。
「人の知性と欲望が本来存在しない『人の翼』を生み出したのだ。
であれば、人の知性と欲望がその『人の翼』を毟り取れない道理は無い。」
空を飛べる程度では巨人の肩の上の少女からは逃れられない。
何を考えたか急に銀河超特急に乗って開拓者になった挙句、他サイトで新作短編小説の連投を行おうとしている阿呆が居ます。私です。
や、やってやりますとも!淑女ばりの早業をお見せしてやります!
ブックマークといいね、ありがとうございます。昨日は深夜急にPVが伸びて嬉しい奇声が上がりました。