今は未だ国家堕とせぬ少女
二人目は仕留めるのが一番容易だった。
群体?視認性?静穏?
大した数でもない、単体驚異度は低い。それだから群体になっても大した脅威ではない。そもそも見付からなければ足が遅いだけ。面倒くさいのはまともにやりあった時だけ。それ以外の状況ならなんということはない。
そして一度それを見て、遠隔操作する系統の魔道具であり、操作精度の高さや動きから単独操作である事と動力的に一定以上の距離離れる事が難しいという弱点が露見する。
ここが都会のド真ん中であれば遠隔操作は厄介この上ないが、過疎で人間が目立つ状況下でそんなものを使えばどうなるか?
的だ。この数を輸送するにはある程度の大きさの乗り物が必要で、操作する人間が居て、ある程度目立ち、操作に集中すると自分を守り辛くなる。かといって守るために人数を割けばより目立つ。
さて、では何処に居るかな?
あぁ、特に難なく、直ぐに見つかった。
森の中にモラン商会のそれではない車輪の跡がある。消した痕跡はあるがそもそもこの辺りは荒らすものが居ないので消した痕跡さえあちこちに現れる。辿っていくと迷彩柄の布で覆われている馬車が見えた。荷台は小さく、一人で来ていると見て良い。
周辺には先程森で見かけたものと同じ魔道具が居る、あれも中の人間の目になっている な。そして、動きを見る限り自動ではなく手動だ。
魔道具には派手な攻撃用は無いと見て良い。ここで派手に動けばコソコソ来る意味が無いからだ。だが発見されて抵抗されては残り一人を取り逃す。故に……
「正面突破で参ります。気付かれる前に、確実に。」
こちらにそういうと同時にW.W.W.を起動。更にH.T.を起動。
H.T.を発条にして発射台を作成。自分をパチンコの要領で射出する。同時にW.W.W.の風で後押し。そのまま最短距離を問答無用で弾丸の様に飛ぶ。
小型の魔道具は足元が安定する様な細工が施されているが、その風に揺らぐ。流石に異常に気付いて周辺を見回し警戒し始めたが、その時には既に遅い、侵入者のシェリー君は馬車の内部。
少しばかり高価で寝心地の良いベッドに寝転がった壮年の男が頭と手を鎧の様な魔道具で覆っていた。
これがあの兵隊の操作用の魔道具といったところ。正面から群団を叩き潰して指揮官を襲うのならばここに来るのは骨が折れただろうが……
「無礼を致します。」
『電撃』
壮年男が痙攣し、力が体から抜けてぐったりとなった。寝転んでいる訳ではなく、意識が刈り取られた証拠だ。
同時に、先程から周囲を警戒していた馬車の外の魔道具が動きを完全に止めた。
「指揮官一人居なくなって役立たずになる軍隊なぞ、『どうぞ頭を潰して下さい』と言っている様なものだ。造作も無い。」
目撃者は0。制圧人数は2名。
残るはたった一人だ。
ブクマといいね、ありがとうございます。
単体で国堕としが出来るのは当然、淑女やら商人やらの厄災連中です。
クビ予定キャラやポッと出だったのに何故こうなったのか私にも解らないので現実的に見ても厄災です。