一者一様。そして夜は誰も照らさない。
炎に群がる虫が集まるのが見える。
音もなく忍び寄るもの、群体を形成するもの、空を飛ぶもの……招待状もノックも無しに良くもまぁこんな時間に来てくれたものだ。
現状、あの焼け野原を見られるとあれやこれやと疑られる。シェリー君、商会もそうだが、スバテラ村やその地下を探られ、あれらが見つかった場合、面倒なことになる。
何より、これから作業をする関係上、虫に飛び回られると邪魔で、アールブルー学園の課題の妨害になる。それは避けなければならない。
という事で、やってきた覗き連中には大人しくかえって貰う必要がある。
それが『帰る』か、『還る』かは本人達の抵抗の度合い次第だが、ね。
「教授、絶対に帰って頂きますから、くれぐれも、くれぐれも邪魔をなさらぬようお願いしますね。」
釘を刺された。残念だ。
「三人。正確に言えば三派閥か。商人が帰りがてら足止めの細工をしていたという話だが、それでもこうして漏れはある。
さて、迎撃は如何様に?」
夜風はシェリー君には届かない。それでも夜間の外出は健康によろしくないので私としては……
「隠密で穏便に、そして俊敏にてし済ませようかと。」
「その為の手段は手元にあるかね?」
「何とか用意出来そうです。」
「それは何より。では、お手並み拝見と行こうか。」
夜闇は三者三様の企みを覆い隠す。しかし、少女の企みも平等に覆い隠す。
夜の闇は皆を平等に隠す。そして同時に誰に対しても光を与える事はない。
光を掴みたければ自分で光を生み出すことだ。
音もなく歩いている男が居た。
居ると解っているからある程度容易に見付けられるが、そうでなければ発見に手間がかかる。歩き方から素人が迷い込んだ訳ではないのが解る。
しかし、それだけで木々と草の中を音も無く動くことは出来ない。今も観察しているが、足元の大きな枝を避けて歩いているものの、足跡を見れば小さな枝を踏み潰した跡がある。
本人の隠密技術に加えて全身を覆う伸縮性の布が消音に一役買っているという訳だ。
隠密特化とばかりに大きな武器は持っていない。しかし、この世界には魔法がある。無手であっても人の頭を斬り飛ばす位は容易だ。
まぁ、それがあると仮定したところで、強襲からの戦闘で撃破は出来るがそれは出来ない。
下手にここでそんなものを振り回されては残り二人が警戒する。結託は無いが、各個撃破の難易度が上がる。
故に、今回やるべきは暗殺の応用。相手の意識の外側から強力な一撃で侵入者を狩る必要がある。
仕掛けを一つ施し、位置につき、そして……
カサリ
木々を鳴らした。
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