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15.

「ねぇ、カディス」

「なんだ?」


 王都に来てからの生活といえば、寝場所もあって、食事は頬いっぱいに頬張って楽しんだ後にデザートまででるほど。洋服も揃えたし、ここにいる人は皆、親切だ。


 文句なんてない。

 ただでさえお客さん扱いしてもらっているのに、有名な鍛冶師らしいカディスの後ろで行程を見させてもらっているのだ。

 武器を作ってもらえる相手すら限られてくるというのに。それは私が暇だからという理由で、しつこく何か手伝うことはないかと聞いたからかもしれないが。


 それはさておき、カディスの後ろで作業を見るようになってから気になることがある。


「それのどこがダメなの?」


 それは完成間近になると決まって彼が武器を再び溶かしてしまうことだ。折角一日かけて作ったのに、また一からやり直しだ。


「これじゃあ、前に重心が傾いちまう」

「そう? さっき持った感じはまっすぐだと思ったけど……」

「それはあんたがそうなるように補正したからだ。武器っつうのは使う側が合わせるんじゃないんだ。武器側が合わせるんだよ」

「でも……」


 カディスが言っていることも正論だ。

 彼自身、鍛冶師として生半可なものが渡せないというプライドがあるのだろう。



 けれどもうすぐで私がお世話になってから一月が経とうとしている。



 私が待てばいいだけならいくらでも待とう。

 そのためにカディスが頑張ってくれているのだから、それが筋というものだ。

 段々と手持ちのお金で足りるのか心配になってきたから、まだ時間がかかるのならば王都で短期の仕事を探すか考え始めたほどである。


 けれど私の武器を作るために、他の仕事をないがしろにしてしまっているようなのだ。


 実際にこの一ヶ月でカディスの武器が欲しいと訪れた人が想像以上に多かった。

 なんでも魔王の発生により魔物が大量発生してしまっているらしい。その影響から、いつもよりも武器を変えたり、修理に出す頻度が高くなっているのだとユーロがこっそりと教えてくれた。

 その証拠というべきか、店を訪れる人は初めて来た日に見たような騒ぎ散らす迷惑な客ではなく、静かに自らの武器を探す、いかにも冒険者って感じの風貌のお客さんである。

 彼らが見るのは店頭に並んでいる武器だ。

 その武器を手にしたお客さんはカウンターまで行き、ここをこうして欲しいとの要望をカウンターで待つクラネットに告げる。そして簡単な物はクラネットが、そうでなければカディスが要望通りに修正していく――とここまではいい。


 問題は日に日に店頭から武器が減っていくことだ。

 今朝お店を覗いた時にはすでに数えきれるほどにまで減ってしまった。私が来た時には店中に飾られていた武器が、である。

 いつもの光景を知っているお客さんなら、賊でも入ったのか? と心配してしまうかもしれない。けれど原因は賊なんかではなく、あの日からカディスが私の武器以外の武器や防具を作らなくなってしまったことなのだ。


 それも一つも、である。


 私よりもカディスのことを良く知っている、クラネット・ユーロ・カンナの三人は「言っても無駄だ」と口を揃えて言う。

 けれど今は冒険者さん達にとってはいち早く武器を手に入れたいだろうし、鍛冶屋にとっては稼ぎ時である。

 どちらもウィンウィンな関係で商売が出来るはずなのに、その状況にはなっていない。

 それがもしも、カディスが私を長くこの場所に留まらせないために、これだけに集中しているというのなら申し訳がない。


 カディスにも、あの三人にも、そしてお客さん達にも。


 この場所にいても私が役に立つことはほぼない。

 日に何度か、形が出来てきた槍を持ってみることくらいだろう。だがそれは役に立つというよりは、今後持ち主となるものの定めである。


 だったら――。


「ねぇカディス」

「なんだ」

「私、ここを出るわ」

 きっと私がいるから気にするのだ。

 武器を打っている時にもたまにこっちを確認するし。


 なら私がこの場にいなければいい。


「は?」

「住み込みで働かせてくれるところを探す。必要な時に呼んでちょうだい」


 手先は不器用だから、簡単な仕事じゃないと、よね。

 短期で、これといったスキルがなくて、住み込み食事付きってこんな好条件で雇ってくれるところがあるといいんだけど……。

 まぁこればっかりは言ってみないとわからない。


 悩むよりもまず行動!

 そうと決まれば職探しだ!


 早速仕事を斡旋してくれる総合ギルドにでも、っと腰をあげて、ぐうっと大きく背伸びをする。するとボキボキっと身体が鳴る。きっとこの一カ月で身体が結構鈍ってしまっているに違いない。


 これは人目の少ないところでウォーミングアップでもしてから行くべきだろう。となれば初めに目指すのは王都の外れの森よね。


「じゃあ、今までお世話になりました」

 荷物をまとめるために部屋に戻ろうと、階段へと足を向ける。


「待て待て待て待て」

 けれどカディスは金槌を持っていない方の手で私の手首を力強くつかんだ。


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