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5.

 早速私の武器を何にするのか思案し始めたカディスを眺めながら、クラネットの帰りを待つこと数十分。


「ただいま戻りました~」

 運送ギルドから帰ってきたクラネットは、どうやら露店で夕ご飯を買ってきてくれたらしい。

 工房内に置かれたダイニングテーブルの上に買ってきたものを並べ終えると「親方、ご飯ですよ」と腕をくんで考え込んでいたカディスをゆらゆらと揺らす。


「ああ、飯にするか。ユーロとカンナは?」

「二人とも今日は遅いそうですから先食べてましょ」

「ん、そうか。ミッシュ、食べられないものとかないか?」

「ないわ!」

「そうか。ならこれ食え、旨いぞ!」


 そういったカディスが差し出してきたのは、パンを薄く引き延ばしたような生地にソースがべったりと塗られた、お肉が包まれた食べものである。

 名前がわからないどころか初めてみる食べ物だが、私の嗅覚と勘がこれは絶対美味しいと告げている。


「いただきます」

 カディスの手の中から受け取ったそれを両手で包み込むと想像以上の重量を感じる。

 そして上から見てみると、お肉の周りには野菜と思われる緑色の葉っぱが巻かれている。こちらもおそらくはソースとよく合うのだろう。

 目の前のカディスにならって上からかぶりつく。するとすぐに口の中でジューシーなお肉のうまみが爆発する。


「んんまぁ!!」

「だろ?」

「このソースがいいわ!」


 上からかぶりついたせいで口の端についてしまったソースを指ですくいとる。

 やっぱり美味しいわ。

 でもやっぱりこのソースはこれだけよりも、お肉や野菜と食べた方が美味しいわ。なにせこのソースには私が分かるだけでも5種類もの香辛料が混ぜ込まれているのだ。この料理に合うように作られたに違いないわ。


 ならやっぱりフルセットで口に入れるべきよね!

 がぶりと再び食らいついて、モグモグと口を動かすとすぐにうまみが広がっていく。


「おいひいわ」

「いい食べっぷりだな」

「ミッシュさん、こっちは僕のオススメですから是非食べてください」

「いただくわ! でもいいの? クラネットの分がなくなっちゃうわ」

「気にしないでください。僕は元々、夜はそんなに食べないので」

「そう、なの?」

 私が遠慮せずにいっぱい食べてしまっているから、こんなことを言っているんじゃないかしら?

 クラネットって育ち盛りの男の子っぽいのに……。

 なら遠慮するのは私の方よねと、クラネットから差し出された容器を受け取るのを躊躇してしまう。するとカディスは口へと運ぶ手を止めて、軽く手の甲で口元を拭う。


「クラネットは一回にそんなに多く食べられねえんだよ。その代わり食事回数は人より多くて、なんなら俺よりも食うから気にするな」

「そうなの?」

「はい。なのでおきになさらず」


 そう言われればここは遠慮せずに!


「わぁ美味しそう!!」

 クラネットから渡された容器に入っていたのは甘い香りを漂わせるものだった。みた感じだと果実かしら?

 それにバターとシナモンを乗せて焼いたってところかしらね。

 これ、食べるまでもなく絶対美味しいやつじゃない!! ……もちろん食べるけど。


 どうぞとクラネットから差し出されたフォークを突き刺して、口に運ぶ。

 こちらは果実の甘みと鼻を突き抜けるシナモンの香りがたまらない!

 溶けたバターもいい味醸し出しているわ。

 お砂糖とかじゃなくて果実本来の甘みを生かしているから、これはレオンが好きそうね。


 今は魔王退治に行っているから食べさせてあげられないけど、これならコンラット村でも作れそうだし、レニィちゃんに作ってもらうといいんじゃないかしら?

 私は絶対に焦がすし、なんならこの果物の原型すら留めておくことができないだろうから姉として作ってあげることはできないけれど。


 でもほら、レオンもレニィちゃんに作ってもらった方が嬉しいだろうし、私は情報提供だけで済ませて置こうと思う。

 あ、味見係ならしっかり果たそうと思う。

 食べたことのある私が確認してみないとちゃんと再現できてるか分からないし、重要な役目よね!



 結局、テーブルに置かれたご飯のほとんどをカディスと私で平らげることとなった。そしてクラネットが用意してくれた食後の紅茶を飲んでいると工房側のドアが開かれた。


「ただいま~」

「疲れた~。クラネット、紅茶淹れて~」


 そのドアから入ってきたのはクラネットと瓜二つの少年と、疲れたとの言葉通りダルっと力の抜けた少女だった。


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