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02 とても良くある転生譚

本日2話目です




「すまんかったーっ!」


 白髪白髯の優しげな風貌のじーちゃんが、トリプルアクセルからの、いやもっと回ってるな。5回転半、ブリザードか? ともあれ、フィギュアスケート選手のような華麗なジャンプからの土下座を決めた。


 俺の名前は……

 名前は、名前。なんだっけ?

 いまいち記憶が曖昧になっている。


「本当にすまん。本当はあの場では別の者だけが死ぬはずじゃったが、あの低級駄女神の奴、手を抜いて失敗しおって君を巻き込んでしまったのじゃ。さくっと蘇生するように本人に命じたんじゃが、魂の保護に失敗しおって、そのせいで君の記憶の一部が欠損したんじゃ。挙げ句に、失敗を隠してすっとぼけおって、わしが知ったときには、君はすでに再生不可能になってしまったんじゃ」


「Oh-」


 つまりは、俺は死んでしまったらしい。

 だが、あまりショックは感じていない。今ここに俺が居るということは、ラノベでよくあるチートをもらっての転生チャンスのはずだ。


 全国1000万男子高校生の夢、異世界転生チーレム無双。送り込まれた異世界で無双しながら現地人たちに崇拝され、両手で余るほどの数のチョロイン達をそろえてハーレムを築く。

 そんなチャンスが目の前にあるのだ。現代社会で死んだ程度のこと、なんということはない。


 あれ? なんか偏った知識だけ多いような。


「うむ、うむ。まさにその通りじゃ。君の死と記憶障害は完全にこちらの手落ち。張本人の駄女神は、すでに封印した上で神界から下層世界への追放刑が決定しておるので問題ない。あとは、被害者である君にできる限りの誠意を、ということになってのう。新しい世界へ行く君には、できる限りのチートを与えて送り出そうと思っておる。ついでと言っては何じゃが、君には地球では役に立たない魔力リソース的なモノを、あちらの世界に持って行ってもらうことになる。チートの数と種類に合わせて、もっていくリソースの量は増えるが、そこだけは勘弁してくれんかの?」

「ありがとう、神様。俺、異世界で幸せになるよ」


 心を読んだ神様の言葉に、直前の疑問も忘れてノータイムで答える。

 家族や友達、その他諸々の記憶が欠損している俺にとっては、メリットしか感じない素晴らしい話だ。


 というか、この状態で現代日本に戻されても、まともに生活出来ずに苦労しかしない気がする。


「よし、早速じゃが君が持って行くチートを決めよう。君が行く世界は、テンプレ的な剣と魔法の異世界じゃ。普通の人間なら、ちっとばかりハードモードじゃが、チートを持って行く君には関係ないの。もちろん、エルフやドワーフ、ピクシーなんてのもおるぞ。言うまでも無く、獣人も当然おる。ケモノの階段別に各種そろっておる」

「その世界、種族差別は?」

「うむ。良くあるテンプレ通り、人間とそれ以外の種族には深い溝がある。奴隷制度もあるぞ」

「なるほど……」


 見事なまでのテンプレ的異世界だ。

 ハードモ-ドということは、最初のチートはコレだな。


「では第一に、丈夫な体を。ちっとやそっとじゃ傷つかない、病気知らずの頑丈な体をお願いします」

「うむうむ、堅実じゃの。慎重なのはよいことじゃ。次はなんにするかの?」


 神様は手にしたタブレットをちょんちょんとつついて問いかける。俺の魂魄にチートを設定するアプリが入っているそうだ。


「そうですね…… ステータスはありますか?」

「うむ。レベルや能力値、スキルなんぞもあるの」

「では、自由にカスタマイズ可能なメニュー画面をお願いします」

「よしよし、任せるんじゃ。レーダーや検索機能付きマップは当然として、ついでに、収納容量もサイズも重量も無限で、内部時間操作も自在な|位相空間<PS>コンテナも付けてやろう」

「あざーっす!」

「戦闘能力はどうするかの? わしとしては、両刀よりも魔法か物理かに絞った方が良いと思うが」

「レベルを上げて物理で殴れって事で、お願いします」

「うむうむ、君は本当に分かっとるのう。生半可な相手では防ぐことも出来ない戦闘能力を授けよう。次は|創造工場<クリエイトファクトリー>とかどうじゃ? PSコンテナに入れた素材を使って好きなものを作れるぞ」

「良いですね、生産チート! おなしゃす!」

「あとは……」

「忘れてた! イケメン! イケメン細マッチョボディでお願いします! 神様、イケメンに転生したいです……」

「うむ、皆まで言うでない。誰もがうらやむイケメンにしてやろう。ええい、出血大サービスじゃ。普通なら共通語をインストールするだけじゃが、あらゆる言葉や文字も理解出来る翻訳機能も付けてやろう!」

「ははーっ このご恩は、一生忘れませんっ」


 今度は俺が神様に向かってジャンピング土下座を決めた。




 さて、これぐらいで良いかな? しばらく考えてみたが、特に思いつかないし。

 選んだチートは丈夫で健康でイケメン(ここ重要)なボディ、レーダーやマップや無限容量の収納、物理的超戦闘能力、生産チート、完全言語能力。

 魔法での攻撃や回復などは助けた奴隷や嫁に任せれば良いだろう。ああ、エルフ嫁はやっぱり白黒そろえたいところ。忘れずに探そう、エルフ嫁。




「では、頑張って新しい人生を楽しんでくれ。リソースの事、すまんが頼むぞ。君の幸せを神界から祈っておるぞ」

「お任せください神様! 本当にありがとうございました!」


 神様に何度もお礼を言って別れを告げ、意気揚々と指示された通りに白い光の中を進んでいくと、不意に視界が真っ暗になった。




 気がつけば、俺は何処ともしれない森(?)の中に立っていた。

 はてなマークを付けたのは、この森っぽい場所に生えている木がせいぜい膝か腰までほどの高さしか無く、俺の身長を超えるような高さのものは数えるほどしか無かったからだ。よく知らないが、植林したばかりの新しく作った林とかがこんな風かもしれない。


 気を取り直して視界に浮かぶレーダーやミニマップ、アイコン、マクロ用スロットなどをチェックする。視界下端に、左右に分かれて五個ずつのマクロスロット。その両端には二重円のゲージがあり、ドーナツ状の外側部分が自動車のデジタル式メーターの様に時計回りに増えたり減ったりしている。


 どうやら、俺はすでに鎧か何かを身につけているようだ。

 視界に入る胸から下や両手両足が、メタリックホワイトの金属装甲に包まれている。さすがはチ-トボディだ。手足を動かしても違和感なく、重さもまるで感じない。これこれ。こういうのが良いんですよ。びば、チート。ビヴラ、チート。


 メニューからマップを呼び出すと、そのほとんどが真っ黒だった。自分の位置を表す青い三角形の周囲が僅かに描かれている。自分で行った場所しか記録されないパターンのマップ機能なのだろうか? でも、検索機能付けてくれるって言ってたよな、と思った時、視界にメッセージが浮かぶ。


<マップ描画のためプローブを射出しますか? y/n>


 なるほど…… プローブ?


 とりあえずイエスと念じると、肩胛骨の辺りで何かがかぱっと開いた感覚がして、新しいメッセージが流れる。


<背部PSコンテナ、1番2番を開口>


 背中の辺りで、しゅぱしゅぱしゅぱしゅぱと軽い衝撃と花火の打ち上げ音の様な渇いた音が。


<サテライト・プローブ、No1~4を射出しました>

<プローブ配置により第三者視点、鳥瞰視点が選択可能になりました>

<現在のマップ描画範囲は半径100kmです>


 あれ、なんかおかしくね?


 一気に広がったマップを見ながら首をかしげる。

 マップ上に増えた緑の三角がプローブらしい。森の中に見えるぱらぱらと散らばった赤いドットはモンスターかな?


 おっと、街発見。

 マップの北側、俺の背中側には周囲をぐるりと壁で囲まれた都市らしきものがある。都市の周囲には赤いドットがほとんど無い。その都市を意識すると、ウィンドウが開いて衛星写真のような感じの映像が映し出された。便利だ。


 同時に俺の前、南側には小さな村があるようで、いくつもの緑色のドットが数えられないほど密集していた。あと、それを取り囲むように、赤いドットがたくさん……


 ダメじゃん。

 どう見てもコレ、村がモンスターに襲撃されてるよね。


 とりあえず、村に向かうことにしよう。知ってるのに見捨てるのは後味が悪いし、街までは30km以上ある。こっちは後回しで良いだろう。待っててね、奴隷嫁ちゃん。こっちが終わったら、必ず助けに行くからね。


 さて。

 村まで10kmぐらいあるけど間に合うかな?

 村人には是非がんばって持ちこたえて欲しい。そして、助けた俺をちやほやして欲しい。


 ルート確認のためにマップをよく見れば、緑のドットが一つこの獣道っぽい狭い道の先にあり、三つの赤い光点に取り囲まれていた。すぐそばに正方形を描くように緑のドットが四つあるが、こちらは襲われていないのだろうか? よく分からない。

 さらに、森の中からそこに向かういくつかの赤いドット。新たなモンスターが集まり始めているようだ。


 なるほど。こんだけ襲われまくる世界じゃ、普通人にはハードモードだ。距離は1kmちょっと。なんとか間に合って欲しい。テンプレ的に考えて、襲われているのは美少女の可能性高し。漲る。


 全力疾走開始。

 神様に貰ったニューボディを信じる。なんとか二分ぐらいでたどり着いて欲しい。あ、三つの赤いドットが消えた。なんだこれ、後から来たモンスターと仲間割れでもしたのだろうか。あ、四角に並んでたドットも二つ消えた。


 これはやばい。二分持たないかもしれんね。







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