確か、そんな名前だったような。
「あーっ!お前っ、こないだの関西人じゃん!!」
「自分かて、こないだのガキンチョやないか!!」
将人と関西人がほぼ同時に思い出す。
この二人、気が合いそうだ。
「…えー、っと。名前何だっけ?関西人。」
「うわっ、それあんまりやないか…!?佐野や!佐野直一!!」
「佐野…か。」
集の問いにあからさまなリアクションをとる佐野。 関西人はどいつもこんななのだろうか…? そんな偏った見方が集の中に誕生した。
「俺は、お前の名前忘れてへんのに…。」
「俺、名前教えたか?」
「俺が知っとるんやから、教えたんと違うか?」
確かに…、と集は思う。だが、どうも教えた覚えがない。
「倉田やろ?倉田孝介。」
一瞬、沈黙が起こる。
「…はぁ?…え、何て言った?」
「せやから、倉田やろ?」
勇敢にも将人が聞きなおす。
だが、期待していた答えは返ってこない。
「いやっ、名前のほうだって!!」
再度、将人が聞きなおす。
ちょっとだけ、将人がすごいと思えたのは集だけではなかった。
侑希のほうも感心した様子で将人を見ている。
「…えっ、孝…介やろ…?」
さすがに不安になってきたようで、佐野の答えに自信がなくなった。
思わず吹き出してしまう。
侑希と将人は声を上げて笑っていた。
これで、孝兄を探していた訳ともつじつまが合う。
だが、佐野のほうは全く理解ができないでいた。
「違うんか!?なぁ、倉田。…違うんか?」
佐野がこちらを向いて困った顔をする。
その顔が、ガタイに合わなくとまた笑ってしまう。
「うわっ、こいつ。人の顔見て笑いよった!!」
侑希と将人はさらに笑う。
当分収まりそうにないな。
「俺は、倉田集っていうんだよ。倉田孝介は、俺の兄貴。…多分佐野は、俺のバッグを見て判断したんだろ?」
「…そうや、思い出した!すげぇな、その通りや!…どうりでこいつらが、孝兄は高校生だ、とか言った訳や。」
少しの間の後、佐野のほうも納得ができたようだ。 俺的には、一部納得できないフレーズがあったが、そこはあえてつっこまない事にする。
「えっと、お前は確か、侑希だったよな?」
佐野が、やっと笑いが収まった侑希の方を見て言った。
「そうだけど、何で知ってるんだ?」
「…あっ、俺、あの時侑希のこと呼んだから…もしかしてそれか?」
「そうや。お前、記憶力ええなぁ。」
思い出したように言う将人を、佐野が誉める。
「へへっ、まあなー。俺の名前は亀川将人。よろしくなっ、直一!!」
人懐っこい将人は、佐野のほうに手を差し出す。
「おうっ、よろしゅうな将人!」
がっちりと、差し出された手を握る佐野。
そして、俺の方を見た。




