ワックスの塗りすぎには注意しましょう。
台坂中学校。
「集のやつ、遅いな…。」
クラス分けの表の前で時計を気にしながら、侑希は心配そうにつぶやいた。
「…どうせ寝坊だろ?」
その隣に座りこんで、将人があくびをしながら言った。
「お前とは違うっつーの!!」
その言葉に、不満そうな顔を見せながら
「お前は本当に心配性だなぁ…。」
と将人はつぶやく。
「…あ、おーいっ、集!!」
集の姿を確認したのか、侑希が声を上げた。
「…侑希っ、将人!」
集が2人のもとへやって来る。
「…こんの、あほが!」
ついた途端に将人が集の頭を叩いた。
「いってぇ…。何すんだよ、将人!?」
「何すんだよ、じゃねぇよ!入学式遅刻なんてシャレになんねーぞ!…ったく、侑希が死ぬほど心配してたっつーのにお前は…。」
「…っえ?お、俺??」
「そうだ、お・ま・え・だ!…ずーっとそわそわしてて、イライラしたわ!」
「そ、そうだっけ…?」
将人が一気にしゃべりだす。
集と侑希はついて行けなくて、お互いに顔を見合わせる。
「…それもこれもお前のせいだぞ?わかってんのか、集!?」
いきなり振られて戸惑う集。
「…っえ?あ…うん。ごめんな侑希。」
「侑希だけかよ!!」
「…あと、将人…?」
「なんっで、疑問っぽいんだよ!?」
「や…本当に心配してたのかー?と、思ってな…。」
「…いいからお前ら、コントなんかしてる暇ないって!!」
時計を見ながら侑希が言った。
「そうだった…。」
「やべぇじゃん!!」
「あっ。俺、何組だ?」
「2組!!俺と将人と一緒だ!!」
侑希が、足元に置いていたカバンを肩にかけながら言った。
その様子をそわそわしながら、集と将人が待つ。
「よっし、教室まで競走しようぜ!!」
「俺、教室の場所知らねぇって!」
「大丈夫だぜ!どうせ、俺の後ろついて来るんだからな。せいぜい迷子になるなよ!」
将人が挑発的に言った。
「…ほっほーう。将人くんこそ俺の案内役ちゃんと果たしてくれよ。…俺の後ろにいちゃ、案内のしようがねぇからな。」
集と将人の間に火花が散るのを、侑希は見た。
「…用意っ、スタート!!」
将人のかけ声と同時に3人は走り出した。
中庭を通り、生徒入り口と書かれたところから校内に入る。
集と将人が先頭を走り、少し後ろから侑希が追う。 階段を一気にかけのぼると、1―2というプレートが見えた。
「おっしゃ!!」
集が小さく声をあげてスパートをかけた。
1―1の教室をのぞいてみる。
生徒が全員前を向いて、担任であろう、女性の話を聞いている。
だが、その中に1人だけこちらを向いている顔があり、目があった。
春休み、町営グランドで同じ顔を見たような気がする。
向こうも覚えがあるらしく、
「あっ。」と声を上げている。
あいつ確か…。
そう思った瞬間、ズルッと足を滑らせて集がこけた。
それにつまずいて侑希もこける。
その間に将人は1―2の教室前に着いていた。
「…勝ったぜ、集!!」
肩で息をしながら、将人がVサインを出す。
体を起こして集と侑希が1―2に向かう。
すると、1―2から担任らしき男が顔を出す。
「こらー、お前らー。何してんだ!?」
「すいません!!」
3人が声を合わせて謝った。
教室から笑いがもれる。
「わりぃ、侑希。…大丈夫か?」
「いいって。大丈夫だよ。」
席に戻りながら集が謝った。
席に着き、考える。
町営グランドで逢った、ごついガタイの少年のことを…。




