表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイム!!  作者: 音無奏
5/48

心の声に従えば

 「…んー…。」



 暖かい布団の中で、集は身じろぎをした。


 カーテンのすきまから太陽の光が差し込み、朝を知らせる。

太陽のまばゆさに自然とまぶたを強く閉じた。


 そして、枕もとち置いた目覚まし時計を手にとって目の前にかざした。



 AM8:05.



 長針と短針が示す時間に集の眠気は一気に吹っ飛んだ。

がばりと布団から飛び起きると、部屋にあるもう一つの掛け時計をに目をやった。



 AM8:10.



 どっちが合ってるんだろう?


 だが、そんなことを考える余裕はなかった。

寝過ごしたことには変わらないのだから。


 急いで着替えをすませ下の階に下り、居間の戸をいきおい良く開ける。


 TVを見ながら茶を飲む母が驚いた顔でこちらを見た。



「何でっ、起こしてくれなかったんだよ!?」



 食ってかかるように怒鳴った。

それに対し、母は何の反応も見せない。



「…やー…だってね。孝介が今日はギリギリくらいが丁度いいって言ったのよ。」



 いつものやわらかい口調で母が言う。

だが、集が納得できるはずがない。



「孝兄が!?」


「そうそう、何か早いと危ないんだって。…あら?」



 バタンと扉が閉まる音。半分も話を聞いてもらえなかった母が、もうっ、とため息をついた。






 何やってんだ俺は――。


 走りながら集は自責した。

遅刻寸前で親子げんかなんか…。


 ガサガサと森の中に入っていく町営グランドにつながる道だ。

そこを通った方が少しは距離が縮まる。


 グランド内に足を踏み入れる。

乾いた土の感触が直接、伝わってくるような気がして…思わず、足を止めた。



 ―走れよ―



 すぐ近く、いや、俺の中で声がした。



 ―走れ、思いきり。何も考えるな―



 どこか、体の奥底からわき出てくるような声。

その深い響きに思わず身震いした。



 ―走れ、さあ、さあ、さあ!走れ!!―



 すぅっ、と一つ息を吸い込んで走り出した。


 足が、腕が、全身がとても軽い。


 風を切り、走る感じ、全身がしなやかに前へと進む感じが心地よかった。

 反対側に着くのがいつもより早く感じられた。


 腕時計を見る。



 AM8:25.



 ヤバイってこれ!!

入学式遅刻ってどうなんだよ!?


 集はひたすらに走り続けるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ