入部届の行方。
「すみませんでした。」
俺はうんざりしながら頭を下げた。
隣には萩先輩。
同じようにうんざり顔だ。
「すんませんでしたー。」
謝り方にもだるそうな感じがにじみ出ている。
「はぁ…。」
職員室を萩先輩と一緒に出て、ため息をついた。
隣の萩先輩がそんな俺をにやりと笑って見てくる。
「何ー?そんな疲れた顔しちゃダメだよ、弟くん。」
言いながら頭をぽんぽんと叩いてくる。
俺は無言でそれを払った。
「ちぇっ。冷たいなぁ、弟くんは。…ま、いいや。じゃっ、またねー。」
そう言って萩先輩は角を曲がっていく。
そのおちゃらけた様子を見て、俺はもう一度ため息をついた。
チャイムが鳴る。
放課後がやってきた。
教室内がざわめく。
「ご愁傷さまだな、集。」
将人が近づいてきて、言った。
俺はじとっとした視線を向ける。
「もう、反論する気力もねぇよ…。」
「…集ぅー。」
その時、やけに語尾を伸ばしながら直一がやってきた。
「ほんま…ごめんな。」
「あー…いいって。俺も共犯だし、仕方なかったしな。」
渋い顔の直一は、苦笑気味にまた謝ってきた。
「ま、とにかく行こうぜ?」
侑希が俺たちを見て、苦笑いをして言う。
途端に将人が顔を輝かせた。
「走るか?」
いつもの如く、そんなせりふを吐く。
それに対し、侑希は顔をしかめてその頭を叩いた。
「ばっか。今からイヤってほど走るんだぞ?」
そう言って、俺に合意を求めてきた。
俺はにっと笑って頷く。
そう、俺は陸上部に入ることができたのだ。
「しっかし、真田にはほんま焦ったぁー。」
グランドに向かいながら直一は言った。
「いきなり、チャリの前に立つんやで?敷いてまうかと思うたわ。」
生徒の安全のためなら、例え火の中水の中〜。
自分のことなどいとわない、熱き体育教師・真田。
その真田にチャリを止められたのが運の尽き。
下校時間が来ても俺と直一は、交通ルールのことから命の大切さまで延々と説教を食らったのだ。
あの恐怖の鬼ごっこの後ということで俺の睡魔はハンパではなかった。
聞いているのか!?と何度怒鳴られたことか…。
おまけにそのせいで、何故か萩先輩と呼び出し食らうし。
他の生徒に無断で呼び出させるな、とか言って怒られてたな。
何やらかしたんだろ、この人は…。
まぁ、確かに二人乗りは良くないけど…仕方ねぇじゃん。
「まぁ、陸上部に入れて良かったじゃねーか。マジでどうなるかと思ったよ。」
侑希が心底安心したように言う。
「へへっ。萩先輩のあの驚いた顔、何か久しぶりに感動したぜ。」
将人も別の意味で何かを達成したようだ。
まぁ、良かったのかな。
「これから、やな。」
直一が言う。
そう、これからだ。
俺は自分の胸に手を当てる。
トク、トクと、自分の鼓動を感じた。
これから走れるんだ、思いっきり!
The End. という訳で、おしまいです。 今までお付き合いいただき感謝しております。 最後におまけを…というか、番外編を載せたいと思うので。 読んでいただけたら幸いです。




