引き下がらない男。
「…そうだ!君、僕の同好会に入らないかい?」
何を思ったのか、その人は俺を勧誘してきた。
「…人の話、聞いてましたか?」
「何だっけ?」
「俺がこんな格好までしてるのは、陸上部に入るためなんですって!」
こめかみを押さえながら言う。
「かけもちで良いよ。」
にこやかに何の迷いもなく言われた。
俺は露骨にため息をつく。
「…何の同好会なんですか?」
きっと、この人のしつこさには敵わないだろう。
聞くだけ聞いてみるか…。
「ナンパ同好会!」
「…失礼します。」
一瞬固まった後、俺は回れ右をしてドアに手をかけた。
だが、全力で引き止められる。
っていうか、何だよそのふざけた同好会は!?
学校許可するなよ!
心の中で叫ぶ。
「待って待って!正式には違うんだ。軟式パーティ同好会っていうの。…自分たちでパーティを企画して社交の場を作り、マナーを学習するためのものなんだ。」
セールスマンに向けるような不審の目でその人を見た。
軟式って、何だよ…。
ってか、後半部分棒読みになってたぞ?
「俺には陸上部しかないって再確認できました。ありがとうございます、そしてさようなら。」
立ち去ろうとするが、簡単にはいかなかった。
「いいじゃないか、入部しようよ?」
「嫌です。」
ズバッと切り捨てると、その人はわかった…とつぶやいた。
俺はほっと安堵する。
が…
「では、入部しないならラグビー部員を今すぐ呼ぼう。」
「な…っ!」
脅迫行為に出てきましたよ、この人。
「さぁ、どうする?」
満面の笑みで問いかけてくる。
ああ、何で俺の周りには変な人たちが集まって来るんだろう?
嘆いてはみるが、心は決まっていた。
「…ごめんなさいっ!!」
一言だけ残してドアを開け、手を振り払う。
「あ…倉田く…」
「古後先輩、後頼みます!」
ドアのすぐ近くにいた古後先輩に小さく叫んで、階段をかけ降りた。
男子トイレから女子の制服が飛び出すって、けっこうすごい光景かも…。 残り時間はあとわずか!?さぁ、どうなる? 評価・感想待ってます。




