捕われた娘(こ)。
また、時計を見た。
先ほどからずっと見ている気がする。
そして浅くため息。
これも先ほどからずっとだ。
下校時間まであと40分だ。
あと40分逃げ切れば俺たちの勝ち。
倉田は陸上部に入ることができる。
倉田の実力は小学校の時点で証明されている。
俺がたたき出した最高記録を、0.2秒も更新しているのだ。
そんな倉田が今、陸上部に入ろうとしている。
絶対、一緒に走る。
走って、その速さを感じてみたい。
そんな思いがあるからこそ、逃げる役まで請け負ったのだ。
隣にいる、女子の制服を着た少年を見る。
そして、もう一度思った。
あと40分だ、と。
だが、そううまくはいかないものだ。
俺たちが隠れている図書館に、ラグビー部員が3人入って来たのだ。
「おい、あと40分しかないぞ。早く見つけろ。」
「ったく、どこにいるんだよ!?」
そう言いながら、図書館内を歩き回る3人。
俺たちは、とりあえず本棚を移動してやつらの死角に回る。
早く出ていけよ…!
軽く舌打ちをする。
あまり目立つことはしたくなかった。
その時、突然腕を掴まれた。
まったく気配を感じなかったので、驚いた。
すばやく後ろを振り返る。
「白河、見ーつけた。」
「…えっ?…萩、先輩…。」
目を見開いて、つぶやくように言った。
何でこの人がここに?
衝撃より先に、そんな疑問で頭はいっぱいだった。
「あの教室からなら、図書館が一番近いからね。」
楽しそうに言って、俺の背後に隠れた少年に目を向けた。
そして、満面の笑みを浮かべる。
「…そっちの娘、弟くんだよね?さっき、ばっちり目が合っちゃったからなー。」
言いながら、少年の腕を掴む。
ものすごく抵抗するが、それも空しく萩先輩に捕まってしまった。
「あ…ちょっ!」
俺の制止など聞く耳を持たず、萩先輩は笑顔だ。
俺は、頬を冷たい汗が伝うのを感じる。
「弟くん、女子の制服でもめちゃめちゃ可愛いじゃん。…って、あれ…?」
萩先輩が少年の顔を見た途端、驚いた顔になる。
って、それもそのはずなんだけどな…。
だから止めたのに…。
「あははは…こんにちは…。」
「…まぁーさーとぉー。」
萩先輩はものすごい重低音で、女装した少年、亀川将人の名前を呼んだ。
そして、その首を締め上げる。
将人の頭からズラがずれた。
二年の教室を出るとき、倉田と俺は別行動にした。
一緒にいたらやっぱり危険だし。
で、その身代わりが亀川将人。
萩先輩と相性が良くないから、会わないようにしてたんだけど…予想外だよな。
「ぐぇぇぇー…しぇ、しぇんぱぁーい、助けてー。」
将人が、萩先輩の腕をぺしぺし叩きながら、助けを求める。
「ごめん、将人。俺も捕まる訳にはいかねぇんだよな。」
「あ、そうだったな。…おーい、そこの3人!白河捕まえて。」
ラグビー部員の野太い返事の少し後、結局俺は捕まってしまった。
出入り口全部固められたら、どうしようもないだろうが…。
頼む、倉田。
逃げ切ってくれよ。
不覚にも捕まってしまったので、残りは倉田ただ一人。
祈るような気持ちで、俺は倉田に出した指示に思いをはせた。
萩先輩なら、気配くらい簡単に消せちゃう気がしますね。 身代わり作戦発動!? っていう訳で、将人に犠牲になってもらいました。 残るは集一人!! 逃げ切れるのか!? 評価・感想待ってます。




