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タイム!!  作者: 音無奏
31/48

夏原星也の華麗な作戦。

 次の日、俺は呼び出された。



 否、拉致と行った方が正しいかもしれない。


 給食当番だった俺が食器を戻しに行ったところで、腕を掴まれて連れられたのだ。


 名前どころか顔も知らない先輩だ。

 下手に抵抗もできずに、非常口のそとにある階段のところまで行くはめになった。


 そこには二つの影があった。

 一つは知っている。

 峰川先輩、陸上部の副キャプテンだ。



「やぁ、君が倉田集だね?」



 もう一つの影が良く通る声で尋ねてきた。

 俺は素直に肯定する。


 するとその人は、ふむふむとつぶやきながら俺を見まわし、近付いてきた。


 すぐ近くに立たれると、俺よりもずっと背が高くて見上げるほどだった。



「…あ、顔あげないで。まっすぐして。」


「あ、すみません。」



 謝りながら、まっすぐ前を見る。


 するとポスン、と俺の頭に手を乗せてきた。

 そして、そのまま自分の鎖骨あたりにその手をスライドさせる。



「…150、あるか、ないかくらいだな…。」



 その人はつぶやく。


 そして、今度はパンパンと俺の体をチェックするように両手で叩き始めた。



「え…なっ!?」



 この人の行動が理解できず、硬直する。



 な…何なんだ、一体!?



「…なるほどねぇ。うん、問題ナシ!峰川、作戦Bでいくぞ!」



 一通り触った後、その人は満足そうに笑った。


 その反面、峰川先輩は渋い顔をしている。



「あの…何だったんですか?」


「ん?…まぁ、採寸?…あ!俺は陸上部部長の夏原星也(なつはら せいや)。鬼ごっこがんばれよ!」


「ぶっ、部長!?」



 …この人が?



 俺は思わず峰川先輩の方を見た。

 苦笑している。



「…本当だ、倉田。一応、こいつが部長なんだ。」



 一応、を強調して峰川先輩が言った。

 俺は苦笑して、その部長を見る。

 何やらご機嫌のようで、鼻唄を歌っている。


 いるんだなぁ、こういう人も。


 しみじみ思っていると、チャイムが鳴った。



「あ…じゃあ、失礼します。」



 そう言って立ち去ろうとする俺を、峰川先輩が呼び止めた。



「明日の鬼ごっこ…がんばれよ。」



 哀れむような目で言われた。


 俺は苦笑しながらハイ、と答える。



 たが、このときの俺は峰川先輩の言葉が持つ、本当の意味を理解できていなかったのだ。

部長さんです!     多分、あんまり登場しないかと思いますが…。   あと、部長さんは鼻唄うまいです!(関係ない…。)

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