夏原星也の華麗な作戦。
次の日、俺は呼び出された。
否、拉致と行った方が正しいかもしれない。
給食当番だった俺が食器を戻しに行ったところで、腕を掴まれて連れられたのだ。
名前どころか顔も知らない先輩だ。
下手に抵抗もできずに、非常口のそとにある階段のところまで行くはめになった。
そこには二つの影があった。
一つは知っている。
峰川先輩、陸上部の副キャプテンだ。
「やぁ、君が倉田集だね?」
もう一つの影が良く通る声で尋ねてきた。
俺は素直に肯定する。
するとその人は、ふむふむとつぶやきながら俺を見まわし、近付いてきた。
すぐ近くに立たれると、俺よりもずっと背が高くて見上げるほどだった。
「…あ、顔あげないで。まっすぐして。」
「あ、すみません。」
謝りながら、まっすぐ前を見る。
するとポスン、と俺の頭に手を乗せてきた。
そして、そのまま自分の鎖骨あたりにその手をスライドさせる。
「…150、あるか、ないかくらいだな…。」
その人はつぶやく。
そして、今度はパンパンと俺の体をチェックするように両手で叩き始めた。
「え…なっ!?」
この人の行動が理解できず、硬直する。
な…何なんだ、一体!?
「…なるほどねぇ。うん、問題ナシ!峰川、作戦Bでいくぞ!」
一通り触った後、その人は満足そうに笑った。
その反面、峰川先輩は渋い顔をしている。
「あの…何だったんですか?」
「ん?…まぁ、採寸?…あ!俺は陸上部部長の夏原星也。鬼ごっこがんばれよ!」
「ぶっ、部長!?」
…この人が?
俺は思わず峰川先輩の方を見た。
苦笑している。
「…本当だ、倉田。一応、こいつが部長なんだ。」
一応、を強調して峰川先輩が言った。
俺は苦笑して、その部長を見る。
何やらご機嫌のようで、鼻唄を歌っている。
いるんだなぁ、こういう人も。
しみじみ思っていると、チャイムが鳴った。
「あ…じゃあ、失礼します。」
そう言って立ち去ろうとする俺を、峰川先輩が呼び止めた。
「明日の鬼ごっこ…がんばれよ。」
哀れむような目で言われた。
俺は苦笑しながらハイ、と答える。
たが、このときの俺は峰川先輩の言葉が持つ、本当の意味を理解できていなかったのだ。
部長さんです! 多分、あんまり登場しないかと思いますが…。 あと、部長さんは鼻唄うまいです!(関係ない…。)




