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タイム!!  作者: 音無奏
3/48

探し人は高校生!?

 半分ほど開けていたカーテンから朝日が差し込んでくる。

 この季節、太陽が出てくるのはあまり早くなく、時計を見るともう7時を過ぎている。

ぼんやりと進んでいく針を見つめ、もぞもぞと寝返りをうった。


 もうひと眠りか…。

ぬくもりが心地よい布団の中で、直一は目を閉じる。


 バンッ!



 その時、勢いよく部屋の扉が開いた。



「兄ちゃんっ!!朝やで!!」


 そう叫んでベッドに駆け寄ってきた少女に、うるせぇーと言って布団を頭までかぶった。



「せやけどー、今日は新しい中学にあいさつ行かなあかん、て言うてたやないか。」


「!!」



 がばっと布団から起き上がる。

それが少女にかぶさったが、軽く無視して部屋から出ていく。

というか、そんな余裕はない…完璧に寝過ごした!!


 どたどたと、階段をおりる音とともに

「兄ちゃんのアホぅ!」という声が家中に響く。

もちろん、直一の耳にはほとんど届いていない。



 乱暴に玄関の扉を開き、ジャージ姿で少年が家を飛び出したのは、それから5分程後のことだった。


 学校までは約20分。昨日行ったグランドを通ればもう少し早く着く。

よしっ!


 少年はランニングの要領で走り出した。




 何やあいつら…?


 直一は町営グランドにいるいくつかの影を見て思った。

 Tシャツにジャージといったラフな服装の少年たちが、鬼ごっこらしきものをしている。


 ふ、と昨日の昼のことを思い出す。


 倉田…この中におるんやろうか?


 自然と足は、走るのをやめていた。

じっと一人一人の顔を見ていく。


 直一に気付いたのか、少年か一人、怪訝そうな顔をして仲間の一人に耳打ちした。

それを始めとして、その2人の周りに少年たちが集まってくる。

少年たちの視線が直一に注がれた。



「あの…」



 それに耐えかねた直一が口を開く。

一瞬、少年たちが身構えた。



「えっと…倉田孝介って人、知りませんか?」



 敬語気味に、自分より年下であろう少年たちに問いかける。


 突然、少年たちが輪になった。

そのスピードに思わず後ずさった。

作戦会議だろうか?

どうすることもできず、少年たちを待つはめになる。

 すでに遅刻のことは頭にない。

待つことは苦手だが、不思議と平気だった。


 どれくらい経ったのか、少年たちが輪をといてこちらを見た。



「…孝兄だろ?知ってるよ、今高校1年なんだ。俺たちも最近会ってねぇから良くわかんないけど…。」



 青いTシャツの少年が口を開いた。

後ろの少年たちがうんうんと頷く。


 高校1年!?

俺より小さいように見えたんやが…。

どないしよう、高校生と走る訳にもいかへんよな…。



「孝兄になんか用か?」


「えっ、いや、別になんもあらへん…けど。」



 ぼんやりと考えていたので、慌てて答えた。

すると、少年たちが一斉に顔を見合わせる。



「…関西弁やぁ!」



 ものめずらしそうに少年たちがこちらを見てくる。



「お前、関西から来たのか!?」



 お前、って…

 最近のガキはほんまに教育がなっとらんわ。

おかんが事あるごとに口にする言葉が頭に浮かぶ。



「…あのなぁお前ら、俺はもうすぐ中1なんやで?…お前はあらへんやろ。」



 言ってから、自分の矛盾に気付いた。

 バカっていうなバカ!

…それ並の矛盾だ。

 けど、まぁ年下やからええか。

そう自分を納得させることにした。



「なんだよ、俺たちもそうだぜ。お前、同い年か。…ん?でも、俺こんなやつ知らねーし…。」


「あほだなぁ、侑希は。…こいつ引っ越してきたんだよ。関西からな!」



 やけに関西を強調して、少年が言った。



「…っお、同い年!?お前らと!?」



 ほんまに驚いた。

明らかに小さい少年たちが同い年だとは…。



「おいおい、お前の方が、そりゃないだろ。なんだよ、その言い草は…。」



 呆れたように侑希と呼ばれた少年が言った。



「そうだそうだ!体は大きくなくても、俺たちは今年から中1なんだからな!」



 なぁ侑希。

そう言って関西を強調した少年が口を開いた。


 確かに、こいつは小さいなぁ。



「ほんじゃあ、お前台坂中学に行くんだ?」


「ああ、お前らもそうなんや?」



 そう言って直一は思い出した、遅刻のことを…。



「やべぇ!!」



 少年たちの返答も聞かずに、弾かれたように走り出した。



「…何だったんだあいつ?」


「さぁ…。」



 そう言って、少年たちは鬼ごっこを再開した。

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