世の中はカラクリのように。
ボールが飛んできた方向を見ると、萩先輩がいた。 すごく、不満顔である。
だが、すぐに面倒くさそうな表情にかえた。
無論、陽子のせいだ。
将人にボールを直撃させた相手を、この女が許すはずがない。
「てんめ、捺芽。将人に何してくれんねん!」
萩先輩に詰め寄りながら、陽子はすごい剣幕で言った。
「ったく、陽子。何だよ、兄貴に向かってその態度は…?」
萩先輩の発言に、俺たちの間で一瞬沈黙が起こる。
俺は自分の耳を疑った。
「あ、兄貴!?」
「って、陽子のかっ!?」
「ありえへん!雰囲気ちゃうやん!」
俺たちはそろって似たような反応をしめした。
そばにいる葵が苦笑している。
「…何だよ?陽子の名字知らねぇのかよ?」
顔をしかめ、頭をさすりながら将人が言った。
「確か……萩、陽子?」
「けど普通、兄弟って考えねぇよ!」
「将人…くん、に対する接し方も真逆やしな…。」
佐野は陽子からの鋭い視線を受け、慌てて言い足した。
ああ、何かもう…わけがわからない。
「…大丈夫?」
気遣うように葵が声をかけてきた。
こんな優しい子がいるから、陽子はむちゃくちゃできるんだ…世の中良くできているのかいないのか。
俺が考えていると、葵は将人の方を向いてすまなそうな顔をした。
「ごめんね、将人くん。でもね、陽子ああ見えても優しいから。…あ、将人くんの方が良く知ってるんだよね?」
「…うん。」
そう言う将人の表情は複雑そのものであった。
そんな将人に気付かず、葵は陽子の方へ歩み寄る。
「陽子、もう部活見て帰ろうよ。」
「せやけど、葵…」
陽子が後ろを向いて、葵の顔を見る。
途端、態度が一変した。
「…わかったっ、帰る!せやからそんな顔せんといて!」
俺たちからは葵の背中しか見えない。
だから、今葵が陽子にどんな顔を向けているのかわからなかった。
だが、あの陽子さえも屈服させる顔である…想像できない。
「…ほんなら、また明日な将人っ!」
言いながら去っていく陽子の後ろ姿を見て、将人がため息をついた。
ほぼ同時に佐野もため息をつく。
この二人…怖いくらいに似てるな。
俺はそう思わざるをえなかった。
萩先輩と陽子ちゃん、兄弟にしちゃいました。 それぞれ、将人とは共通の思い出がありまして…。 それがきっかけで、陽子ちゃんは猛烈にアタック(?)し、萩先輩はいじわるをするという今に至るわけですね。 いつか番外編書けたら、そのへんをあきらかに…。 本編はなかなか進まないですね、すみません。 これからもお付き合いお願いします。




