救世主は一度にやって来る。
その時、突然ドアが開いた。
ドアに背中を預けていた俺は後ろへよろめき、開けた人物にぶつかった。
というよりは、抱きとめられた。
「えっ、倉田!?」
「なっ…佐野っ?どうしてこんな所に…」
後ろを振り返ると、佐野と女子二人がいた。
「っと…この二人もどうして…?」
「いや、なんやいろいろあってな…あの後…」
「捺芽!!」
佐野の言葉をさえぎって、女子の一人が名前を叫んだ。
捺芽…って、萩先輩のことだったよな?
部室の方へ振り返ると、萩先輩の面倒くさそうな顔が見えた。
そんな萩先輩に女子は歩み寄り、その胸ぐらを掴んだ。
俺だけではない、その場にいたほとんどの人間が凍りつく。
「自分何してんねん!?弱いもんいじめもええ加減にせえや!」
がくがくと揺らしながらその女子は言い放った。
ラグビー部員に勝てるとは思わない。
だけど、そうキッパリ言われるとさすがに傷ついた。
そんな女子の行動に、萩先輩は大した反応も見せない。
ただ、面倒くさそうな顔をくずさずにいた。
「陽子、もう止めといて。」
もう一人の女子が止めに入る。
「せやけどっ…!…あっ!将人や!!」
嬉しそうに言う女子――陽子の言葉に、俺は振り返った。
将人と侑希、それに知らない先輩が走って来ている。
「…だっ、大丈夫…か、集?」
「集ぅー。…大丈夫かぁ?…何もっ…されてないかっ?」
「お前らの方が大丈夫かよ!?」
膝に手をあてて、ぜぇはぁしながら将人と侑希が言った。
一緒に来た先輩は、息一つも乱さずにじっと俺を見ている。
「…あの…。」
「ん?」
たまらなくなって、声をかける。
だけど、何て言えばいいのかわからない…。
「いや、何か…?」
「…君が、倉田?」
俺の言葉を無視して、その先輩は聞いてきた。
「…そうですけど。」
「そうか。」
どうして俺の名前を知っているのか聞こうとした。 その時、
「萩!」
「将人ーっ!」
先輩と陽子が同時に別の名前を呼んだ。
そして陽子は将人に飛びつき、先輩は萩先輩に歩み寄った。




