姫サマを救出せよ。
「おいっ、集連れてかれちまったぞ!!どうするんだよ!?」
佐野の袖を引っ張りながら、侑希が悲鳴に近い声で叫んだ。
「うーん…。どこに連れてかれたんやろか。…将人、わかるか?」
「俺っ!?何で俺なんだよ…。」
「萩っちゅー先輩の行動を予測するんや。…あれや、あれ!…シャーロック・ホームズみたいに。」
「…予測不能。」
渋い顔で将人が言った。 一瞬の沈黙の後に、はぁと三人一斉にため息をつく。
その時、後ろでひかえめな声がした。
「倉田くんを探してるんだ?」
「えっ?…あっ、えーと君は…。」
佐野は、隣の席に座っていた少女とこの少女が同じ人物であることに気付き、名前を思い出そうとする。
だが、その答えは意外にも将人の口から聞くことになった。
「あっ、葵ちゃん!?」
「葵っ、集の居場所知ってんのか!?」
少し戸惑ったような顔をして、葵という名の少女は侑希に答える。
それほどまでに、侑希の形相は鬼気迫るものがあったのだ。
「うん…何か三年生にお姫サマだっこされて、外に出てったよ。」
それを聞いた侑希の表情が凍りついた。
「なっ…し、集を…おっ…お姫サマだっこっ!?」
「アホ、そこやないやろ!外って…何があるんや!?」
どもりながら言う侑希にツッコミ、まだ冷静にしている将人に聞く。
「外…外…?…っあ、部室!体育会系の部室がある!」
「…なぁ、これはほんまに…。」
「ヤバイだろっ!!」
最悪の状況を理解した三人の顔からさぁっ、と血の気が抜けていった。
「集!!」
突然、侑希が叫んでローカを駆けだした。
「おっ、おい侑希。待てって!!」
その後を追って、将人も駆けだす。
その場には、佐野と葵の二人だけになる。
「…あの、行かなくていいんですか?」
遠慮がちに葵が佐野に問いかける。
佐野はうーん、とうなるだけでそこから動こうとしない。
「行ってあげてください!…倉田くんと友達なんでしょ?」
葵は佐野の腕を引っ張りながら訴える。
だが、佐野はまじめな顔をして言った。
「…ちゃうで。友達や、ない。」
「っ…」
「何や葵?どないしたん?」
葵がさらに訴えようとした時、背後から声がした。
侑希は葵ちゃんのこと呼び捨てなんだよねー。何で? 侑希「…それは、幼なじみだから。」 けど、将人は葵ちゃんって呼んでるよね?どうして? 侑希「知らね。…ってか、集はどうなるんだよ!?」 …侑希、本当に集のこと大好きだよね…。 侑希「違っ!しっ…集はただの、幼なじみで!!」 はいはい。 次回は、その姫サマがあの人に…!という事で、お楽しみに。




