何て優雅な作戦。
今回、あの人が動き出します!
「へーへー、わかりやした。侑希で遊ぶのも飽きたし…部活見に行こうぜ。」
「せやな、行こか。」
さらっと本音をもらして、将人が切り出した。
それに佐野が乗っかってくる。
この二人、本当に似てるな…。
隣で侑希の長ーいため息が聞こえる。
「じゃ、じゃあ行くか?侑希。」
「そうだな…。」
俺への返答も弱々しい。 その様子に苦笑いを浮かべながら、カバンを斜めにかけた。
「ほんなら、行こか倉田。」
いつの間にか隣に来ていた佐野がいきなり俺の手をとって歩きだした、全身がこわばる。
侑希の顔から血の気が引いていくのが見えて、さらに慌てた。
「まっ…ままま待て、佐野っ。ちょっ…手ぇ離せ!」
思いきり腕を振って佐野の手を払う。
「なんや倉田?照れんかてええやないか。」
「いやっ、そーいう事じゃなくてだな…あーもうっ、バカ!」
何て言えばいいのか分からなくなり、子どもっぽくなってしまった。
「集ってば、照れすぎ。」
ぷぷっと笑いながら、将人が余計なことを言う。
「照れてねぇよ、バカ将人。」
「ひどっ、集くんがそんな事言うなんて…。」
「だーっ、うるせぇ!ほら、さっさと行くぞ。」
いろんな言葉を振り払って、俺は教室を出た。
後ろで将人たちがまだ何か言っているが、あえて無視して進む。
ある程度進んだところで肩を掴まれた。
忍び笑いが聞こえる。
ったく、まだからかうつもりかよ…。
「あーもうっ、うるせぇよ将人!……うわぁっ!?」
掴んできた手を振り払いながら、言った。
そして、驚いた。
後ろにいたのは将人ではなく、萩捺芽だったのだ。
思わず声を上げてしまった自分を恥ずかしく思いながら、萩先輩とラグビー部部長を見た。
「ハロー、弟くん。…そんなに驚かなくてもいいじゃない。」
ふざけたように萩先輩が言ってきた。
はぁっ、と露骨なため息をつく。
それに反応したように萩先輩があれっ?といった顔をする。
「弟くんお疲れ?…じゃあ…。」
そう言ったところで萩先輩はにんまりと笑う。
やばい…。
とっさにそう思った。
ものすごく、嫌な予感がする。
そして、皮肉にもその予感は見事に当たることとなった。
「部室で休んで行きなよー。」
ああ…どうしてこう悪い予感ばかり当たるんだろう…ちょっと悲しくなってきた。
そんなことを思っていると、突然俺の体がふわりと浮いた。
そして移動し始める。
萩先輩の顔がすぐ近くにあった。
…どうやら、萩先輩に抱えられたまま移動しているかしい。
「萩先輩、降ろしてください!」
そう冷静に言うつもりが、そううまくいくもんじゃなかった。
「ははは、萩せんっ…ぱいぃー!?」
彼の名前を呼ぶので精一杯だった。
「うわっ、弟くんめっちゃ軽い!」
そんな俺の声を気にかけようともせず、萩は俺を抱えたまま走り続けた。
俺はせめてもの抵抗として、手足わじたばたとばたつかせる。
だが、ラグビー部員からそう簡単に抜け出せるはずがない。
逆に、さらに強く俺の肩や足を抱きこまれてしまった。
「おっ…おおっ、降ろしてっ、ください!」
「もー、弟くん往生際悪すぎるわー。」
俺が必死になっていった言葉を、萩先輩は軽く無視して走り続ける。
往生際って…観念しようものなら、好き放題するでしょうが!!
そうこうするうちに、生徒玄関に到着する。
終礼が終わってあまり時間がたっていないため、生徒たちでいっぱいだった。
俺は長ーくため息をつき、つぶやく。
「…最悪。」
「そんな暗ーい顔しちゃだめでしょ。…さっ、参りましょ、弟くん。」
「いやだぁー!!」
人ごみの中を否応なしに突き進む。
それに乗じて逃げ出そうとも考えたが、無駄だった。
しかも悪いことに、先輩方にぶつかりそうになり、思わず萩先輩にしがみついてしまう。
はっとして萩先輩の顔を見ると、満面の笑み。
さりげなーく視線をそらすと、萩先輩のいたずらっぽい声が耳に届いた。
「やっぱかっわいーなぁ、弟くん。もっと抱きついてもいいよん。」
「絶ッ対にっ、ありえません!」
「…ふふん、それはどうかな?」
そう意味ありげな言葉を言ったと同時に、萩先輩はなんのためらいもなく外へ飛び出した。
シューズのまま、俺を抱えて…。
少し驚いたが、しがみつくほどのことでもない。
俺は勝ち誇ったように萩先輩を見た。
だが、その顔には余裕の笑み。
「振り落とされないよう、ご注意くださーい。」
その言葉と同時に、俺たちの体は宙を舞った。




