事態は思った以上に深刻だった。
連続投稿記録が途絶えてしまった…。これからもがんばりますので、お付き合いをお願いします。
入ってきた人物が、ぱちんと電気をつけた。
部屋が一気に明るくなる。
その光がまぶしくて、目を細めた。
明かりに慣れてきた頃、ドアのところに立っていた人物が部屋の中に入ってきた。
その人物に目を向ける。
「…孝兄。」
部屋に入ってきたのは、兄の孝介であった。
いつものふざけた感じではなく、バツの悪そうな顔をしている。
体をベッドから起こす。 なんとなくではあるが、孝兄が来た訳がわかった気がする。
「…集、あのな、今日は入学式だったんだよな?」
そうだよ、といきなりの質問にあまり驚くことなく答えた。
そんな俺を見て、孝兄は軽くため息をついた。
そして、諦めたように問かけてくる。
「…って、もう何が言いたいのかわかってんだな。」
その問いに微笑んで答える。
はぁ、ともう一度ため息をついた。
「だよなー、お前変にカンがいいからなー。」
言いながら、ベッドのふちに腰かける。
口調がいつもの孝兄のものになっていた。
「でさ、あのラグビー部員達は何なんだよ?」
単刀直入に聞くと、孝兄がびくっと震えた。
「…え、いや。俺の後輩…だよな。」
「そんな事わかってるよ!何で、俺を無理矢理入部させようとしてるんだよ!?」
「そ、それは…。」
言い寄っていくうちに孝兄の声は小さくなっていった。
「孝兄っ!!」
「……集、悪い…。」
しばらく黙りこんだ後、孝兄は言いづらそうに口を開いた。
「俺、卒業式の日さ、テンション上がっちゃって…お前のこと、ついさ…」
「つい…どうしたんだよ。」
何となく嫌な予感がする。
孝兄が弱々しい笑みを浮かべた。
「…つい、お前のこと頼むぜ、って言っちまった…。」
「……はぁ?…そんな一言だけで、普通あそこまでするか?」
俺が言うと、孝兄は渋い顔を作った。
まだ、続きがありそうだ。
「…いや、走るのがな、お前めちゃくちゃ速いだろ?そのこともつい言っちゃって…。」
「なっ…。」
言葉が出てこない。
台坂中学ラグビー部といえば、最強のラインとランナー不足で有名である。
そんなところに、陸上の得意な倉田孝介の弟、つまり俺の話をするなんて…。
「いや、マジですまん!!このとーりっ!」
「そんな事言われても。…でもさ、さっさと陸上部に入ればそれでいいんだろ?割と簡単じゃん。」
「……いや、それがな…。」
そこまで言って、孝兄が言葉を切った。
まだ、悪い知らせがあるのかよ…。
「それが…俺、あいつらに渡しちゃったんだよな…お前の入部届…。」
「はぁっ!?」
「すまねぇ、集!」
何も言えなかった。
口にする言葉が見付からない。
事態がここまで深刻だとは…。
「…じゃあ、何で萩っていう先輩はさっさと入部届を出さないんだよ?…もしかしてなくしたんじゃ…?」
そこまで言って考える。 あの先輩に限って、そんなことがあるのだろうか…?
いや、ありえねぇ!!
じゃあ、どうして?
「入部届には本人の署名が必要なんだよ。…それに、勝手に出したってお前の承諾ナシじゃ意味ないだろ?」
「それなら、その入部届あってもなくても一緒じゃん。」
「…いや、萩のことだ、絶対に何か仕掛けてくる。油断するんじゃねーぞ、集。」
やっぱり、萩先輩は恐ろしいんだな…。
理解を深めて、絶望する。
「てか、渡した張本人が何偉そうに言ってんだよ。バカ兄貴!」
「集くん、ひどいやー。」
反省の色のまったく見えない声で、孝兄が言った。
「あー、もうっ!さっさと出てけ、バカ兄貴!」
言いながら、ベッドに突っ伏す。
数秒後、部屋のドアが開き、閉まる音がした。
ゴロンと寝返りをうち、仰向けになる。
頭の中で今日あったことが反すうされた。
これから1週間が勝負なのか…。




